Amy's This Week

2021.04

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2021.04.28

4/19-25, 2021 第93回アカデミー賞授賞式と、『パーム・スプリングス』

予定より2ヶ月延期させてのアカデミー賞授賞式が、4月25日にロサンゼルスで開催されました。日本では月曜日放映でしたが、現地時間を尊重して、また感動がナマナマしいうちにと思いwこの週に入れました。

2ヶ月延期開催の理由はもちろん、COVID-19パンデミックです。日本でのこの2ヶ月間とは対照的に、アメリカのこの2ヶ月はワクチン接種が圧倒的に広まったので、大変意味ある2ヶ月延期だったでしょうね。それでも全く油断せず、諸々コロナ対策の万全を期した内容になっていました。

その一番の特徴は、「始まった!」と思ったら、それは『Into The Spotlight』という、授賞式の事前パーティーであったことです。今までの授賞式では、ドルビーシアターのステージ上で賞の発表の合間に、楽曲賞ノミネートのパフォーマンスがいくつもありました。昨年のレディGAGAが記憶に新しいところ。ん?あれは2年前ですね!時が経つのは早い!!(^^;

で、今年は全てのパフォーマンスがこの事前パーティーでのことでした。パーティーは昼間でもパフォーマンスは夜だったり、アイスランドからの中継であったりと、時間や場所を隔てる工夫をしたんですね。ダウンタウンにあるアカデミー博物館の屋上での夜のパフォーマンスは、だだっ広いLAに点在するビルや家々の明かりがバックグラウンドになっていて、とても綺麗でした。中でも一番の私のハイライトはH.E.R.でしたね〜!『ユダとブラック・メサイア』からの『ファイト・フォー・ユー』。H.E.R.が作詞作曲。H.E.R.はとてもカッコ良くギターをプレイするのですが、今回はドラムスで登場です。なんでも出来るのね!

この後、オリジナル楽曲賞も受賞しました!H.E.R.おめでとう!

さて、こうして事前パーティーでいくつかのパフォーマンスが披露されたのちに、会場をダウンタウンのロサンゼルス・ユニオン・ステーションに移して、授賞式本編が始まりました。その様子が、まさに映画のオープニングのように編集されていて、いつものドルビーシアターでの熱気が無くても、面白い授賞式にしようというアカデミーの気持ちが伝わりましたね。最初のプレゼンター、レジーナ・キングが颯爽と会場に入って行く様子は、本当にこれから映画が始まるワクワク感で満たされました!

グラミー賞同様、楽しみにしてはいけないと思いつつ、『In Memoriam』(追悼コーナー)は毎年注目のコーナーです。今年は、コロナ対策の一つとして授賞式開催時間を短縮するためでしょう。非常に簡素な、一切の映像を挟まずスライドショー的でした。それも仕方ないですね。過去1年で、亡くなったと知って私がショックを受けたのはイルファン・カーン、ショーン・コネリー、そして35歳で亡くなってしまったチャドウィック・ボーズマンや57歳で亡くなってしまったケリー・プレストンなど…BGMのスティーヴィー・ワンダーの『永遠の誓い』の内容と相まって、泣きそうになりました。

トム・クルーズの『ザ・エージェント』で、振ったトムを思い切り殴ったり、親指と人差し指で『L』を作って「ルーザー!(負け犬!)」と言う気の強い美しい彼女を演じたケリー・プレストンが忘れられません。ジョン・トラボルタは、息子に続いて奥さんも亡くしてしまったんですね(涙)。

驚いたのは、リタ・モレノの登場です。作品賞のプレゼンターでした。57年前『ウエストサイド物語』で助演女優賞を受賞した時に着ていたドレスを着て、3年前のアカデミー授賞式に登場したので十分驚きだったのに。この時86歳。

もともとエミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞と、テレビ、音楽、映画、演劇全ての部門で賞を受けた人(2020年時点で16人)の一人であるリタ・モレノはそれだけで生きる伝説と言えるのに、なんと今年は89歳で再びアカデミーのステージに上がったのです。写真は娘と一緒に満面の笑みなリタ・モレノ。

プレゼンターとして作品賞を紹介したのですが、その紹介の仕方が秀逸!「今からちょうど60年前に、『ウエストサイド物語』が10部門でアカデミー賞を受賞しました。その中で最も有名な賞は、助演女優賞(自分が獲った)でしたが、他にも小さな賞がありました。作品賞もその一つ」…と、これには会場中大ウケwww さすがの余裕というか、貫禄というか。黒柳徹子さんのさらに上をいく存在感ですね。

そんなリタ・モレノに紹介された作品賞受賞が『ノマドランド』です。監督は中国系、そして女性。もちろんそれだけではなく、作品自体が一つのアメリカそのものを捉えていたからだと思います。時には、アメリカ以外の国の者にしか見えない景色があるのかもしれません。コロナ禍のせいもあって、まだ観れていないノミネート作品が多い中、唯一『ノマドランド』は観れていた作品だったので良かったです。

そして監督がスピーチを終えてから、「では、ファーンにも一言」と、主人公のファーンを演じたフランシス・マクドーマンを紹介すると、「ファーンじゃなくて私はフランよ」と、いつもの仏頂面でマイクの前にやって来ました。そして、「どうか皆さん、この映画は出来るだけ大画面で観て下さい。また近い将来には、皆で映画館に行って、肩を寄せ合って今夜のノミネート作品を全部観て下さい」とスピーチしました。これだけでグッと来たのに、最後には「この賞を、仲間のウルフに捧げます」と言って、思い切り吠えたのです!まさに狼の遠吠え。オジーじゃないんですよww アカデミー受賞女優が、ステージで吠えましたwww

WOWOWで観たので、授賞式放映のあと司会のジョン・カビラ氏がこの時のフランシス・マクドーマンが良かった、「彼女の喜びの炸裂。そして自然へのリスペクトが…」と言っていました。でもだとしたら「私たちのウルフに…」の「wolf」を複数形で言うのではないかな?と思いました。撮影中西部にいた狼「たち」と。でも単数だったんです。まるで特定のウルフを指すように。

そしたら…実はこの3月に、この作品でサウンド・ミキサーを務めていたマイケル・ウルフ・スナイダーという男性が35歳の若さで亡くなっていたそうです。それで、フランシスは「この作品賞を、私たちのウルフに捧げる」と言ったんですね。泣けてきますよね…涙。

フランシス・マクドーマンって、少し変わり者のようながら、いざとなると凄く良いことを言ったりして…まるで、アメリカの樹木希林って感じじゃないですか?まだ63歳。これからますます楽しみな女優さんです。どんなひねくれ婆さん役をするのかwww

音楽の話では、この作品賞発表の直後、つまりフランシスの咆哮の直後にかかったBGMがスターシップの『愛はとまらない』でした。追悼コーナーもそうでしたが、いやあもうホントに、ぴったりな良い曲を持ってきますよね!中国人女性監督に、整形はおろかメイクさえしない変人女優…w 「クレイジーと言いたいヤツらには言わせておこう。そんなの気にしない。一緒なら夢を構築できる。ずっと力強く立とう。誰にも止めることは出来ない…」と歌うグレイス・スリックの声。ああ、サイコーだぁ!ww

特別賞とも言える、ジーン・ハーショルト友愛賞を獲ったタイラー・ペリー(シモンズ・スタンレーみたいな名前よねwww)は、あまりにも立派過ぎて、大感動しました。多くの作品で制作、脚本、主演などを務め、大金持ちです。そんな彼は、ありとあらゆる人々に救済の手を差し伸べているそうです。薬物、貧困、被災、その他本当に何でも!もちろん、お金が無ければ出来ないことですが、あってもこの人のように行動する人は多くはないでしょう。凄いな。「子供に、どんな人も嫌うなと教育して欲しい」というスピーチは、もちろんスタンディング・オベーションされました。日本にも、こんな人がいたら良いのですけどね。

グレン・クローズの『Da Butt』(お尻)ダンスにはウケましたw ユーモアたっぷりな人柄で、今年はアカデミー授賞式常連のメリル・ストリープがいない穴を、しっかりと埋めてくれましたw 彼女の8回目のアカデミー賞ノミネートは、またノミネートで終わってしまったのが残念。そろそろ受賞させてあげたいです。

とまあ、まだまだ他にも挙げればキリがないほど、いつもより少ない出席者、短い授賞式でも印象に残るシーンはたっぷりありました。それでも放映が終わってみれば、今回の93回目アカデミー授賞式は史上最低の視聴率だったとか。まあ、アメリカでは昨年ずっと映画館がクローズだったので、ノミネートされた作品を観ていない人が多かったのかもしれません。知らなければ授賞式に興味を持つこともないのかも。

それでも、こんなコロナ禍にあって2ヶ月延期しただけで授賞式をしようと決めたこと、会場を駅の構内にするなんて考えたこと、会場内でマスクをしていないのは映画の撮影と同じだと説明したこと、出席者全員がワクチン接種はもちろん、何度も検査もしたこと、パフォーマンスは全て野外で行ったこと(アイスランドは寒そうだった!)…その他もろもろ、とにかく関わる全ての人々が前向きに努力したことが目に見えて、私は歴史に残るアカデミー授賞式だったと思いました。もちろん、再びドルビーシアターで賑やかな授賞式が観れる日が来るのを楽しみにはしていますが…。きっともう来年にはそうなりそうですよね!God save Hollywood!!!

 

そんな週の一本は、『パーム・スプリングス』です。

3度目の緊急事態宣言となり、再びシアターがこぞってクローズになるなんてorz もっとまとめて観ておけば良かったです。まさかそんな心構えはなかったので、いつものように用事のある時に時間と場所の都合の良い作品を選んでいました。それがこの週はコレ。

タイムループ物では『ハッピー・デス・デイ』を超える作品はないですね〜。それでも、適度なユルさがこの作品の魅力でしたw 俳優たちも、ストーリーも。また、それこそがパーム・スプリングスなんだな〜。そんな中、シメてくれていたのがJKシモンズ。まさかあのおっさんが、こんなユルい作品に出るとはw きっと演じることが楽しくて仕方ないんでしょうね。

観ていて結末は分かるんですが、二人が全然美男美女ではないところ、フツーっぽいところがとても良いのです。そしてきっちり90分。フラッと時間つぶしで何でもいいやと映画館に入って観て、かなり満足出来る作品です。ああ、でも映画館がのきなみクローズになるなら、『ミナリ』を観ておくんだった〜泣

 

というわけで、3度目の緊急事態宣言です。2度目が甘かったので反省して、3度目で再びキビしくしているようですが、期間が短いのでどうなのかな。5/11で終わるんでしょうか?延長しても良いけれど、とにかく路上喫煙と並んで、路上飲酒も禁止にしましょうよ。日本は飲酒に甘過ぎます!