Amy's This Week

2020.06

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2020.06.22

6/15-22, 2020 超写実絵画の襲来展と、『白雪姫』

コロナ禍の東京では、連日3〜40人の新規感染者を出し続けながらも深夜休業要請解除・地方への移動制限解除と、怖々ながらも着実に社会が動き出し、徐々に美術展も再開し始めました。

私が最後に美術展に行ったのは1月だったので、5ヶ月ぶり!過去これほど間空いたことあったかしら?事前にPDFをダウンロードし、プリントアウトして、自分の連絡先や入館日時などを記入して持参・提出。もちろん検温され、マスク着用もマスト…なんてことは何のその。むしろ会話厳禁やグループお断りは静かに鑑賞したい身には望むところだし、内心喜びに打ち震えての(大げさ?ww)久々の美術展でした。その名も『超写実絵画の襲来』展です。

以前、ロンドンのナショナル・ギャラリーについて書いた時に、お気に入りの作品としてヤン・ファン・エイク(アルノルフィニ夫妻)やホルバイン(大使たち)などを挙げていたように、元来私は写実が大好き!なので、2010年に開館した写実作品のみを集めたホキ美術館にはとても興味があったんですよね。が、幕張のもっとず〜っと先…って、かなり遠いorz そのうち行きたいと思いながら既に10年経っていましたw

ただでさえ5ヶ月ぶりの美術展で嬉しいのに、空いているのも嬉しいし、現代日本の写実作品に新鮮な感動を覚えました。上の、ポスターにもなっているホキ美術館の人気作品だというタイトル『5:55』(右上の時計が5時55分を示している)は、西洋絵画にはない日本人をモデルにしているところがまずは一番印象的ですが、構図はすっかりフェルメール!またメイクは薄いのに妙に色っぽい流し目…と思いきや、絵のモデルになるのは6時までの約束だったので、時計をチラ見して「あと5分…」と思っているところだとか。あ、それで無表情の中にも少し嬉しそうで、でもやや疲れからか気だるさもあり、色っぽく見えるんですね。良い顔です。

作者の生島浩(カタカナではなく!w)氏は、ニューヨークやウィーンに滞在してフェルメールを模写していたというプロフィールを読んで深く納得。ネットで他の作品をチェックしてみたら、出るわ出るわのフェルメールっぽさにニヤニヤしてしまいました。これは楽しい!

こちらは青木敏郎氏の『レモンのコンフィチュール、芍薬、染付と白地の焼き物』です。私は静物も大好きなので、見入ってしまいました。ヤン・ファン・エイクの代表作『ゲントの祭壇画』のあるベルギーのゲントに長く滞在していたとか。そりゃあ超絶写実の鬼ファン・エイクの影響を受けますよね。テーブルの上に並べられたアイテムも素晴らしいですが、右半分でテーブルから垂れる布が、ファン・エイクの描く貴族の衣装のようです。無地にすれば良いものを、こうした織り込まれた生地を描くところが、もう細かく描くのが楽しくて仕方ないんでしょうね。もちろん私には出来ませんが、楽しさは理解出来るような気がします。

が、これは全く理解出来ない!と思ったのが、この野田弘志氏の『聖なるもの THE-IV』です。 画家の庭で見つけた鳥の巣だそうですが、この作品は縦横2メートル大。現実にはあり得ない、迫り来る大きさです。その大きさの作品を間近にして巣を構成する枯れ草一本一本を凝視すると、もう気が遠くなりそうでした。これは…常人には理解出来ません!

鳥の巣といえば、多くの鳥の巣を描いて『鳥の巣ハント』とあだ名のついたウィリアム・ヘンリー・ハントが私は大好きで、我が家の壁に額絵が飾られています。これは『卵のあるツグミの巣とプリムラの籠』。この人も恐ろしく綿密に描きますが、あくまでも可憐。縦横2メートルの鳥の巣の迫力には、本当に気圧されました。

そして今回、私が一番気に入ったのがこれ。『存在の在処』by 石黒賢一郎作。モデルは画家のお父上だそうです。 わりと多くの絵画作品を観てきた方だと思いますが、この場面の切り取り方はとても新鮮!こんな作品見たことありませんでした。昭和な雰囲気の画鋲や黒板、黒板消し…高校教師だったお父様が退職する時に、学校へ行って描いたそう。その表情は、退職する寂しさと同時に息子のモデルになる照れも感じられ、なんとも惹きつけられます。が、ふと黒板にチョークで書かれた文字も、わずかに残るチョークの消し跡なども全て油絵の具で…と思いだすと、もう愕然とするのでした。

同じ画家で、これは『Shaft Tower』という作品。いやもう言葉が出ません。「写真のよう」と言えばそれまで。でももちろんそうではないことを知っているので、ため息しか出ないのです。こうなるともはや、画家が己の技術に挑戦しているようですね。もちろん、大勝利です!

他にもまだまだ感動した作品がたくさんありましたが、キリがないので最後の1枚。これぞもう本当に写真にしか見えない、藤原秀一氏の『ひまわり畑』です。印象派のルノアールは「光を描いた」と言われますが、これほどまでに写実絵画で光も描き切っているとは。眩しいばかりです。本物を目の前にすると、永遠に見ていられそうでした。

14世紀、15世紀のヤン・ファン・エイクやホルバインの時代は、当然カメラが存在しなかったので、人間の手でどれほど写実に描けるかがテーマでした。が、やがてカメラが出来、見たままであれば写真を撮れば良いのだからと、画家たちはオリジナリティーを求めるようになったのです。かつてバルセロナで観たピカソ14歳時の作品は、見事な写実作品でした。が、だんだんと成熟していきやがては『ゲルニカ』なんですよね。

そんな美術界も、一周回ったということなのでしょうか。随分一周のスパンが長かったけれどw 今や撮影技術は進化し、その加工も自在。そうした世になって改めて、人間の手による写実絵画の魅力が画家たち自身によって再認識されたようですね。これは嬉しい!昨年の台風による水害でクローズしていた本家ホキ美術館が、この夏には再開されるとか。今度こそ、一日遠足のつもりで行ってみたいです。 再開されたBunkamuraは、6/29(月)までです。来場に際しての注意などはコチラをどうぞ。
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/20_choshajitsu2.html

 

そんな超久しぶりに美術展へ行けた週の一本は、『白雪姫 あなたが知らないグリム童話』です。

今や怪演が定番になっているイザベル・ユベールに女性監督、そしてフランス映画…となれば、かなり辛辣な白雪姫であることが容易に想像出来ます。期待満々で観たら、かなりの満足感でした。

R15指定は、R18でも良いんじゃないかな〜と思うほどで、なかなかのエロティック・サスペンスw ストーリーは知っての通りで、舞台は現代のフランスとかなり大胆にアレンジされていても、鏡、救ってくれる狩人、毒りんごなど、きちんとオリジナルのポイントを押さえているところが面白い!これも一種の様式美ですね。

舞台がフランスのどこなのかはっきりしないのが残念でしたが(たぶん架空の村?)、私だって義理の親にうるさく言われる仕事に戻るより、こんな素敵な田舎で暮らしたい!と思うほど魅力的なところ。景色や村の様子を見ているだけで楽しくなりました。そして現代の白雪役のルー・ドゥ・ラージュが王道のフランス女優らしく、可愛くて淫乱ですww

フランスの女優さんて、古くはイザベル・アジャーニやソフィー・マルソー、今ならレア・セデュとか、可憐なのに脱ぎっぷりが良いんですよねw ハリウッドに慣れていると驚いてしまいますw ただ、それでも決して下品にならないところが、ヨーロッパの魅力なのかもしれません。

 

さて、先々週書いた『路(ルウ)〜台湾エキスプレス』を読み終わり、この週末は読むのがもったいなくてとっておいたジェフリー・アーチャーの『運命のコイン』を、ついに読むことにしました。普通小説家は英語でノヴェリストとか、ライター、オーサーなどと言われる中、古くはシドニー・シェルダン、そしてこのジェフリー・アーチャーは、ストーリーテラーとか、ページターナー(ページをめくらせる人)と言われます。その通りで、もう土曜日の夜ページをめくり始めたら、結局徹夜してしまいましたww ひえ〜、徹夜なんて久しぶりw

それにしてもやはり裏切らない!最高でした!前作のクリフトン・シリーズも完読していたので、それを読んでいた人だけが大喜び出来る、映画で言えばカメオ出演的な部分もあって、もう堪りませんでした!

にしても、7年かかったクリフトン・シリーズの時から「長生きして〜!」とずっと心配していたジェフリーは、現在80歳。こんな凄い作品がまだ書けるのだから、もっともっと長生きして欲しいです!もう1作、いや出来ればあと2作!長生きして下さ〜い!閉塞する日常をしばし忘れる為にも、超オススメ作品ですよ❤️