Amy's This Week
2020.09
9/14-20, 2020 月岡芳年 血と妖艶展と、『ミッドウェイ』
先週、北斎が100作品描きたかった『百物語』を、わずか5作品で終えてしまったことを、もしかしたら台頭してきた若い絵師、歌川国芳の存在でもう嫌になっちゃったのかも?と書きました。それが事実かどうかは分かりませんが、そう思ってしまうほど歌川国芳の武者絵は、劇的にドラマチックです。そしてそんなドラマチックさをさらにエキセントリックに昇華させたと言える弟子の一人が、血みどろ絵の月岡芳年です。『血と妖艶展』とは、もうタイトルを聞いただけで、胸踊ってしまいましたww
いきなり話は飛びますが、NHKで2003年から放映をしていた時代ドラマ『雲霧仁左衛門』が大好きです。現在シーズン4までが放映されていますが、最初の頃、シーズン1と2で出ていた柄本佑扮する因果小僧六之助(通称ロク)が、純粋過ぎて、迅る気持ちを抑えきれず自滅してしまったことがとても残念で寂しく思っていました。
その後、ドラマ『知らなくていいコト』での寡黙な尾高さん役の柄本佑に、特にアノ有名な(でしょ?w その後もYouTubeで何度も見ちゃいましたw)キスシーンでもうキュ〜ンとなっていましたw カッコ良過ぎ。
で、話を戻すと…w 太田記念美術館の『血と妖艶』展のポスターにもなった、この人を切ったばかりであろうこの男。なんと、ロク(因果小僧六之助)だったんですね!タイトルは『英名二十八衆句 因果小僧六之助』。尾高さんです!(いや、違うんだけどw つまり柄本佑ということで…ww) この月夜を見上げて刀の血を拭うロク。殺すつもりなくただ強盗をするだけだったのに、抵抗され、ほっかむりを取られ顔を見られてしまったことから、結局殺してしまったところだそうです。なるほど。月に向かって「あ〜、殺しちまったよ。しょうがねぇなぁ…」と、でも思っていそうな風情。後悔というよりは、諦めというか、放心というか…ドラマでの柄本佑っぽさ全開ですw
『英名二十八衆句』とは、歌川国芳の弟子二人(月岡芳年と彼の兄弟子落合芳幾)が、歌舞伎や浄瑠璃などから殺戮シーンだけをピックアップしてそれぞれ14作ずつ描いたシリーズで、浮世絵に『血みどろ絵』というジャンルを確立したのでした。特に芳年の作品は本当に血みどろで、大人気だったそうです。
他にも『英名二十八衆句』から、これは『笠森於仙』。歌舞伎の『怪談月笠森』からの一シーンです。江戸の笠森稲荷の前にあったお茶屋の娘お仙は、大変な美人で有名だったそう。お仙見たさに、笠森稲荷への参拝者が増えたほど。笠森稲荷にお参りして、そのあとお仙のいるお茶屋に立ち寄るパターンが人気だったんですね。で、この絵は、タイトルのお仙ではなく、お仙の姉のおきつだとか。ん? 妹が大人気の美人だというのですから、姉も美しかったのでしょう。すでに既婚者だったので、そんなおきつに言い寄ってきた市助という男をあっさり振ります。すると…とんでもない勘違い男の市助は、逆恨みをしておきつを惨殺してしまうのです。それがこのシーン。やがて、歌舞伎ではお仙が姉の仇を討つそうで、だから歌舞伎の題が『笠森於仙』なのだとか。
市助という男、侍ではないので手にしているのは刀ではなく出刃包丁です。すでに数回切りつけた後なので、包丁も、おきつの体も血だらけ。いえ、まさに血みどろです。そんな血みどろの体を押さえつけた市助の手も血だらけになっていて、おきつの頰や足には市助の手形が、そして、市助の足にはおきつの手形が付いています。なんてドラマチック。さらにおきつの足もとが乱れて腿まで見えているところがエロチックでもあり、芳年の血みどろ絵人気の秘密が分かる気がします。
またこの月岡芳年の血みどろ絵の凄まじいところは、ピックアップした恐ろしいシーンもさることながら、文字通り血みどろの色ですよね。芳年は、血液の色の濃さや粘っこさを出すために、赤い絵の具に膠(にかわ)を混ぜていたそうで、そのベタベタとした質感が、血みどろ絵=別名無残絵の文字どおり無残さを鮮やかに表現しています。
これは『英名二十八衆句 由留木素玄』。領主の由留木素玄は囲碁が好きで、盲目の碁の妙手、笹山検校と一局楽しんでいたところ、口論となり笹山検校を殺してしまったのです。碁盤の上に、殺した笹山検校の首が乗っています。 私がこの絵を凄い!と思ったのは、殺人者である領主の由留木素玄が本当にお金持ちであることを、摺りの超絶技巧でも表しているということなのです。見る角度を変えると、黒い着物の織り模様が見えてくるのです。相当高級な着物を着ているということですね。 16世紀ハンガリーの『血の伯爵夫人』ことバートリーも同様で、日頃上品な身分の高い者、領主や高貴な伯爵夫人だったからこそ、なおさら起こした事件の凄惨さが際立つのです。
さてこちらは『魁題百撰相 島左近友之』です。『魁題百撰相』とは、『海内百戦争』との語呂合わせだそうで、南北朝時代から江戸初期までの日本国内の戦で活躍した百人を描いたシリーズです。私が気に入ったのは、血を吐きながら戦う島左近。 家康好きの私がなぜ島左近を好きかといえば、もちろん、映画『関ヶ原』の影響ですw あはは、私なんてこんなもんですよww 日本史はめっぽう弱いのに、2017年の『関ヶ原』には惹かれ、シアターで2回観て、その後WOWOW放送を録画してさらに2回観て、実際に関ヶ原まで旅もしたくらい。そんな映画の中で、特に平岳大演じる島左近がそりゃもうカッコ良くてw (石田三成も岡田准一なのだから憎み切ることは出来ず、でもやはり武闘派の福島正則も好きw ) 関ヶ原の戦いで島左近は被弾します。それでも一旦陣地に引き上げてから、さらに壮絶な戦いを繰り広げる。この芳年の島左近絵は、そんな傷を負ってもなお血を吐きながら戦っている姿そのものに思えます。よく見れば口からの血は、ねっとりと長く垂れていて…平岳大の鬼の形相そのものじゃないですか?ww
『血』『妖艶』『闇』のテーマ分けで展開された『血と妖艶』展において、やはり私が気に入ったのは血みどろばかりでしたね〜w なので少し反省して、『闇』から一つ。『月百姿 吼噦』です。 月をテーマにした100枚シリーズで、『吼噦』(こんかい)とは、狐の鳴き声を表しているそうで、そんな解説がなければ私にはとても読めませんでした。
これは狂言の『釣り狐』からで、罠にかけて狐狩をすることを狐を釣る、と言っていたんですね。自分の一族を皆殺されてしまった老狐が、白蔵主という僧に化けて猟師に会いに行く。そして狐は神の使いだから殺してはならない、などと諭して、狐狩からもう止めるという約束を取り付け「しめしめ」と帰るところです。思わず安心から油断して、顔だけ狐に戻ってしまったんですねw 可愛い。お尻の辺りが膨らんでいるのは、尻尾も出てきてしまったのでしょうか。
人に化けるのはたぬきだけかと思っていたら、狐も化けるとはw お蕎麦の種類にもあるように、きつねもたぬきも、昔から身近な動物だったんですね。私だったら、庭先にご飯を出してあげるのにw
そういえば、月岡芳年の苗字はもともと吉岡だったのが、のちに月岡と変えたのだそうです。この人、月が好きだったのでしょうか。確かに芳年の作品はみな、陽の光よりも月明かりの方が似合います。月夜の海=Luna Seaな〜んちゃってww
ということで、他にも多くの作品があった岡田記念美術館の『血と妖艶』展。10/4(日)までなので、あと10日あまり。一般800円とリーズナブルだし、会期終盤でもそれほど混まない穴場美術館ですよ。
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/exhibition/blood-and-the-bewitching
そんな週の一本は、待ってました!『ミッドウェイ』です。 ウォームービー好きなので、全くキャストなど気にもしないまま観に行ったら、好きな人ばかり出ていたという大喜びな作品でしたw え〜?山本五十六がトヨエツ?!似せるために少し増量したのでしょうか。貫禄たっぷりでした。またパトリック・ウィルソンに、デニス・クエイドに…ともう、これ最高!
ディザスタームービーは好きですが、中にはただCGシーンの凄さだけで薄っぺらい作品も少なくない中、ローランド・エメリッヒ監督は大好きでした。ん…でもよくよく振り返れば『ID4』と『デイ・アフター・トゥモロー』(あ、デニス・クエイドでしたね❤️)がものすご〜く好きなだけで、『紀元前一万年』とか『2012』などはかなりガッカリしたので、コッポラ同様名作と駄作と極端な人かもしれませんw なので、この『ミッドウェイ』はどう出るか…?
…と思って観に行ったので、結論としては、もうサイコー!でした❤️ CG技術の進歩もあるかもしれません。空母から飛び立つ戦闘機や、日本艦に向かって急降下する迫力ある映像には、もうホント痺れちゃいましたww 亡き父にも観せてあげたかった!これは『トップガン』の続編にも超期待しちゃいますね〜。 パールハーバー襲撃の太平洋戦争勃発からタイトルのミッドウェイまでを描いているので、日本軍のパールハーバー急襲成功で日本側優勢の状態で戦争が始まります。調子に乗る日本軍、日本を恐れる米軍、でもリメンバーパールハーバーを合言葉に団結する米軍…と、どのように太平洋戦争の流れが変わって日本敗戦に至ったかがよく分かりました。
米軍の恐れ知らずのパイロットの名前がベストというのが出来過ぎだな〜と思ったら、Richard Bestって本当だったとは。終盤彼が帰艦した時は、思わず拍手しそうになってしまいましたw デニス・クエイドは…役作りでしょうが、眉毛が濃過ぎてwww パトリック・ウィルソンは相変わらず理知的で素敵でした。米軍の情報参謀で、いわば米軍における黒田官兵衛?第二次世界大戦の風向きが変わったのは、彼ら米軍情報部のお手柄もあったんですね。
とにかく、パールハーバー襲撃や、空中戦やベストが日本艦船に向かってギリまで突っ込んで行くシーンなど、凄まじい迫力はさすがエメリッヒ映画。日米どちらに対しても公平な目で描いているのが良いし、戦況が暗転しつつある日本軍が捉えた米兵に対して酷い仕打ちをするのも、実際にあったのだろうな〜と思いました。とにかくこれはエメリッヒ監督の反戦映画。良かったです。エンタメ作品としても、戦闘シーンの迫力は『スターウォーズ』さながらに楽しめましたw
さて、この週結局は菅新総理大臣が就任して、平均年齢60歳強の新政権が発足しました。最年少39歳の小泉進次郎環境大臣以外は40代ゼロで全員が50歳以上。80歳の大臣もいて、そんな彼らに10年後、20年後、30年後の日本を見据えて責任を持って働けるのか?と思いますが、ケータイ料金値下げとか、デジタル庁を作るとか、まあ頑張る気持ちはあるのでしょうか。そのデジタル庁に向けて、デジタル改革担当大臣に任命された平井卓也氏は、日頃からタブレットを手放さないとか。おお〜!タブレット福山か?!www とにかく当面は、次週半沢直樹最終回が楽しみです〜!
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