11/12-18, 2018 東山魁夷展と『華氏119』

この週は、以前から前売りを買っていたピエール・ボナール展に行かないとそろそろヤバイ!と思って、慌てて国立新美術館に行ってきました。が、そのボナール展はまたの機会に書くとして、今回は「それじゃあ同じところでやっている東山魁夷展にも行こう」と友人に言われ、私としては全くノーマークだったこちら。ノーマークだったからこそ、なかなか衝撃的だったのでした。 そーいえば、この景色はテレビCMで見たことがありました。シャープAQUOSで吉永小百合さんと出ていましたね。調べてみたら、もう10年も前だったようですが、映像の記憶というのはしっかりと残るものですね。 深い青と緑が印象的な作品群は、ひたすら静かで美しい。なぜ静かだと思うかは、気がつけば東山魁夷の作品には、人物が一切登場していないからかもしれません。また、とにかく画面いっぱい一部拡大図のようにを景色を描き込んでいるのです。そこには焦点が絞られ、集中した視点があり、音に神経が行かないのです。 また、日本中を旅して写生をしたそうで、風景画家として精力的に各地を描いたというのに、それがどこかがすぐには分からないような切り取り方をしています。シロウトとしてはもったいないような気もするのですが、それがどこか知った時、なぜかなるほど!と分かる気がするんですよね。その感動がまた魅力でした。 私が良いなと思った作品をいくつか。『年暮る』。 昭和30年代後半に、川端康成に「今のうちに京都を描いておいてほしい」と言われたそうです。京都が変わってしまうからだとか。しかし、東山魁夷は大自然を描くために北欧へ飛び、3ヶ月北欧を旅するのです。そこで多くの作品を描くと、帰国後すぐに京都へ。やはり人に言われたからではなく、3ヶ月もの間北欧の景色と向かい合った日々があったからこそ、自ら京都を欲したんでしょうね。 そう、この『年暮る』は京都の景色です。しんしんと雪が降る京の町に、除夜の鐘の音だけが響くように聞こえてきます。って、言われてみれば…なのですがw でもそこが肝心なのですよ。言われてみて、改めて見て新たに感じるところが面白いのです。 もう一つは『行く秋』。珍しく青以外。 紅葉を描く作品は世の中、山のようにあるけれど、こんなに木の根っこ部分と葉が落ちた地面を切り取るって、凄い感性ですよね。が、これはドイツの景色だそう。ドイツ人に、「ドイツの木は、葉の落ちた地面を見れば、木の形が分かる。そんな落葉の仕方をするのだ」と言われたそうです。それを描いてみたかったのか。落ちた紅葉で埋め尽くされた地面に集中して見てみましょう。根元しか描かれていない木の上の部分がどんな姿をしているか、分かりますか? 東山魁夷がなぜ人気があるか、どんどん分かってきました。 さて、友人が楽しみにしていたという今回の東山魁夷展のメインイベントは、奈良の唐招提寺御影堂障壁画再現でした。 すぐに思いましたよね。東山魁夷は、日本のミケランジェロか?なんてw 彫刻ではなく、バチカンのシスティーナ礼拝堂の壁や天井の絵画の方を思ったのです。そもそも無知な私は、まずはこの唐招提寺とはなんぞや、から知らなければなりませんでしたが。 鑑真和上が建立した唐招提寺。そこにある御影堂に鑑真和上坐像(国宝)が納められており、そこに鑑真和上に捧げる東山魁夷の襖絵が連なるのです。もちろん、絵画として非常に美しく美術品鑑賞としてたっぷりと楽しめるわけですが、鑑真和上が母国中国から日本へ渡航するのに非常に苦労したこと。その過程で盲目になってしまったこと。そうしたことを知って鑑賞すると、東山魁夷の思いが胸に迫って来るのです。 東山魁夷の作品は静かだと前述しましたが、ここでは鮮やかに波の音が、風の音が、滝の音が、聞こえてきます。目で見ずとも、景色を感じることが出来るように盲目の僧に捧げられたのです。多くの美しい襖絵の中で、唯一描かれた生き物がホトトギス。鑑真和上にホトトギスの可愛い鳴き声が届きますように…。 東山魁夷ならではの美しい青緑で描かれた日本の風景とは対象的に、鑑真和上の母国中国の風景は水墨です。 東山魁夷は、まだ自由に中国へ行けない時代に、大変な苦労をして渡航し鑑真和上の故郷や、ゆかりの地を写生したそうです。また興味深いのは、水墨画とはいえ、水墨画独自の墨のにじみを嫌い、工夫をして一切にじませない画法を用いたという点です。では、どうして濃淡を出したかといえば、ひたすらの重ね描き。こうして、にじむというある意味偶然・自然に任せるのではなく、あくまでも意図的に自らの画力で濃淡を出したところが、決して墨一色で描いたとは思えない、濃い緑や紫を感じさせる鮮やかさを生んだのですね。 日本の景色では音を感じさせ、中国の景色では色を感じさせる。鑑真和上への思いを込めた東山魁夷の襖絵は、見る者のふんだんなイマジネーションを刺激する、素晴らしい芸術作品でした。桂林へ行きたくなった〜w ちなみにこの唐招提寺御影堂は、現在大々的な修復工事中で、見学することが出来ません。だからこそ、収蔵されている作品を東京の展覧会に貸し出してくれたんですね。素晴らしいじゃないですか!しかも、絶対に実際の御影堂へ行くよりも、近くからはっきりと見ることが出来るはずなので、超お得な機会でした。混んでるはずだわww とゆーことで、日本が誇る風景画の巨匠東山魁夷展は、未熟な私でも大感動出来る素晴らしいものでした。もちろん昔から大好き!という人なら、唐招提寺御影堂襖絵が身近に鑑賞できるこの機会をお見逃しなく。12月3日までです。 そんな週の一本は、『華氏119』です。 2016年のアメリカ大統領選は、トランプとヒラリーの「どちらが良いか?」ではなく、「どちらがより嫌か」という結果でした。それほどヒラリー=民主党は嫌だという国民が多かったわけですよね。 それがなぜか、分かった気がしました。私は全く知らなかったミシガン州フリントの水問題はあまりに衝撃的。さすがマイケル・ムーア監督、非常に分かり易く教えてくれます。この時のオバマ元大統領のパフォーマンスは信じられない!部外者の私ですら開いた口が塞がらず…なんてこと!超失望しました。これじゃあ民主党が嫌になって当たり前かもしれません。 トランプ大統領になって早2年。その間に様々な愚かしく見える言動がありましたが、結局は中間選挙でも民主党の圧勝という結果にはならなかったわけが、見えた気がしました。 この作品では、ムーア監督は決してトランプ政権を皮肉ったり告発しようとしたのではなく、トランプ政権を含め、現在のアメリカ国家そのものを告発していました。民主党に喝を入れ、傍観者となった市民に喝を入れようとし、つまりは、およそ一億人が無投票だったという国民全員を告発したとも言えるでしょう。無関心ほど罪なことはないのです。 字幕監修が池上彰さんなので、アメリカの問題が非常に分かり易く理解出来ます。こーゆー作品を観なくちゃね!!学生の子供がいる皆様、日本でも18歳以上が選挙権を得たのだから、映画代を出してあげてこの作品を観せてあげて。そして自分は、『ボーラプ』をリピ観?www 最後に…、選挙は義務ではなく権利です。選挙があったら、絶対に皆様、投票しましょうね!!!!

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