4/2-8, 2018 ビュールレ・コレクションと『ウィンストン・チャーチル』


先週書いた通り、美術展をハシゴした日のもう一つの方が国立新美術館の『至上の印象派展 ビュールレ・コレクション』でした。



3月末日のことなので、桜が満開!そして、美術展自体も、それほど期待していなかっただけに感動が満開でした!

スイスの実業家、エミール・ゲオルク・ビュールレ氏の個人コレクションが2008年に盗難に遭ったため、膨大なコレクションを個人蔵とするには限界を感じたのでしょうか。2020年には全てチューリヒ美術館に移管されることになったそうです。そのため、ビュールレ・コレクションをこれだけまとめて観ることが出来るのは今回が最後のチャンスだそうです。そりゃそうですよね。美術館のものとなったら、いつもの入場料を支払って美術館に来るお客さんから不満が出ない程度しか、外には貸し出せませんからね。



ポスターにもなっているルノワールの『イレーヌ』や、セザンヌの『赤いチョッキの少年』もさることながら、アングル、モネ、マネ、ドラクロワ、ピサロ、シスレー、ドガ、ゴッホ、ゴーギャン…と、もぉ、ギャ〜〜〜〜!!!!と叫びそうになるほどの充実ぶり。ビュールレ?誰それ?なんて言ってた自分が恥ずかしい。これは凄いです!お見それしやしたwww

入場して最初のお部屋でノックアウトされたのが、大好きなアングルの、でも美女ではなく一見地味な『イポリット=フランソワ・ドゥヴィレの肖像』でした。本当にアングル的には地味な題材なのに、作品の前で足が動かない。少し薄くなった髪と、重厚な絹の刺繍と、繊細なレースと、いぶし銀のような剣…。それぞれの質感がもう、なんて美しいのでしょう。この作品を、本物を間近で観ることが出来ただけで、「来て良かった!!!」と思いましたよ。モデルが地味なおじさんなだけに、アングルの筆使いをしっかり味わうことが出来たのかもしれません。今までヨーロッパは好きでもスイスってあまり興味なかったのですが、これはいつかチューリッヒに行く理由になるな〜。そのうち絶対、イポリットには再会したいです。いや、会期中にもう一度六本木に行くかww



そして、驚いたのがマネの『ベルヴュの庭の隅』。これがマネなのです。モネではなく。うわぁ〜、マネがモネの真似?なんて言っている場合じゃありませんwww これは素晴らしいじゃないですか❤️ マネが野外で写生していたなんて(『草上の昼食』は絶対写生じゃないですよね)。マネのイメージが変わりました。なんだか本当に、良いものを観たな〜!



さらに後半には出ました、我が愛しのヴィンセント!なんとこのビュールレ展にはゴッホ作品が6点も出品されており、そのどれもがファンとしては嬉しくてしょうがないのですが、特に初めて観てとても気に入ったのがこの2点。ヴィンセントは沢山作品を残しているので、知らない作品が多くて常に感動できます❤️

『アニエールのセーヌ川にかかる橋』(1887)。初めてゴッホの描く機関車を観ました。作品に縁取りをしているのも、初めて気づきました。



『花咲くマロニエの枝』(1890)。私の大好きな『アーモンドの花』に似た可愛い白い小花ですが、最晩年の作品らしく、バックがうねっています。彼の葛藤が表れているようですね。



…と、感動した作品を挙げていくとキリが無いところで、このビュールレ展の『顔』でもあるルノワールのイレーヌについて。『可愛いイレーヌ』のモデルは裕福なユダヤ人銀行家の8歳の長女。1880年の作品ですから、イレーヌは1872年生まれなのかな。

その後世界は第二次世界大戦となり、ヒトラーはフランスに進行し、裕福なユダヤ人の家から問答無用で家財道具一式、特に美術品は根こそぎ奪っていきます。それを知った連合軍側は、奪われた美術品の奪還を目的とした作戦を立てて実行しました。映画にもなりましたね。ジョージ・クルーニー監督・出演の『ミケランジェロ・プロジェクト』(2013)です。あれは面白かった! 実際にはまだまだ何万点と発見されていない作品があるそうですが、『イレーヌ』は見事に取り戻され、イレーヌ本人がそれを知り自らの手に戻したのです。それが戦後の1946年で、イレーヌはもう74歳。



それまでのイレーヌ自身は二度の結婚を経て、ご本人は助かりましたが夫や子供、自身の妹までも収容所で亡くなり、イレーヌは大変辛い思いをしたのです。だからイレーヌにとってルノワールの描いた8歳の自分の絵は、懐かしい幸せな時の思い出を呼び覚ましてくれるものだったのでしょう。しかし、程なくしてイレーヌ本人が直接ビュールレに売り渡してしまったのです。それはなぜか。

これらのコレクションの持ち主だったエミール・ゲオルク・ビュールレは大成功した実業家ということですが、実はナチスに武器を販売し戦争で大儲けをした人でした。日本でいう小佐野賢治みたいな人かも。戦争の影には常に大儲けする人がいます。そんな人に、イレーヌはなぜ大切な作品を売ってしまったのでしょうか。

イレーヌも、ビュールレも、今は亡き人たちなので真相は分かりません。が、もしビュールレが年老いたイレーヌに、懺悔をしたくて市場価格よりも高値を提示し、年老いた女性に最晩年の安らぎと、彼女をモデルとした芸術作品を永遠に丁重に保管する約束をしたのであれば、とても素敵なことじゃないですか。そして実際に、この「絵画史上最も可愛らしい」と言われる少女の作品が、こうして我々も観ることが出来るようになったのです。

繰り返しますが、そんなビュールレの素晴らしいコレクションを、日本でこれほど多く観ることが出来るのはこれが最後のチャンスです。5月7日までですよ。皆様、六本木へぜひ!!

http://www.buehrle2018.jp

さて、今週の一本は『ウィンストン・チャーチル』です。



サブタイトルは、『ヒトラーから世界を救った男』。日頃は人名タイトルが嫌いな日本の配給会社が、原題は『Darkest Hour』なのに敢えて人名タイトルにしたのはさすがチャーチル。知らない人はいないですもんね。

いや〜、昨年『ダンケルク』を観ておいて良かったです!話がとてもよく分かりましたw さらに、これを観たので『ダンケルク』もより理解出来た気がします。最後になぜあれほどの大歓迎を受けたかなど…。

映画は事実とフィクションを織り交ぜているそうで、私が一番感動した地下鉄のシーン(ネタバレになるので詳しくは書きませんw)は、残念ながらどうやらフィクションだそうです。それでも、現実の歴史の結果を知っているので、チャーチルにも葛藤があり、それをどう乗り越えたかを伝える、とても良いシーンでした。

それにしてもつくづく思ったことは、やはり人は思いを巧く言葉にして表現することが何よりも大切だということでした。チャーチルは言葉が巧みで、それを駆使して人々を扇動し(良い意味で)、民意を動かし、国を動かし、世界を動かしたのです。素晴らしいな〜。

言葉だけではなく、ゼスチャーも多用していましたね。Vサインをしている写真が非常に多く残っています。チャーチルにとってこれはピースではなく、勝利(Victory)のVです。「絶対に勝つ!」という決意ですね。



そんな中、下の真ん中ww 「裏ピース」。これは知らずにやっている日本人かなりいるので気をつけて欲しいと思うのですが、アメリカでいう「Fxxk you」ですよ〜www ただ、私もではなぜ英国ではこれがFxxk youになるのか知らなかったので、今回調べて分かってなるほどでした。

昔、英仏が戦争をしていた時(100年戦争かな)、フランス兵が捕虜にした英国兵の利き手の人差指と中指を切り落としたそうです。二度と弓を引けなくするために。なんて酷い!でもまあ、それが戦争ですね。そして、だから英国兵はその二本を立ててフランス兵に見せて「俺たちはまだ弓を引けるぞ!」「なめんな!」つまり「Fxxk you!」となったんですってww ああ、ちょっと面白い逸話!良いな〜この話ww

ということで、今でもイギリス人たちはこれをやります。だから日本の皆様、ピースは手のひらを相手に向けて出しましょうね!!完璧メイクのゲイリー・チャーチルもやっていますwww



さて、この作品はメイクアップで日本人の辻一弘氏がアカデミー賞を獲ったことでも話題になりました。ゲイリー・オールドマンは、辻さんがメイクをしてくれるなら…と、この仕事を受けたそうで、映画のエンドロールにも主演級の扱いで辻さんの名前が大きく出ていました。なんだかとても嬉しかったです。とにかく、メイクであることが絶対に信じられない素晴らしいメイクで、そこも見所の一つでしょう。ああ、もう一度観たいな!!まさに毛沢東の言うところの、「血を流さない戦争」である政治の、「血を流す政治」である戦争のお話でした。

最新記事