Amy's This Week
2020.09
9/21-27, 2020 鴻池朋子 ちゅうがえり展と、『マイバッハ 不屈のピアニスト』
私にしては珍しく、現代美術展を観てきました。まったく知らなかった鴻池朋子さんの作品群は、最初呆気に取られながらも、観るほどに引き込まれていく不思議な世界でした。その名も『ちゅうがえり』展です。
会場は、今年1月にオープンしたという京橋のアーティゾン美術館です。前身はブリジストン美術館ですが、今年新たな建物に生まれ変わり、名前も一新されました。『アルチザン』と言えば山下達郎サンのアルバムタイトルであり、「職人的芸術家」の意味ですが、このアーティゾンは、芸術の『アート』と地平線の『ホライゾン』を組み合わせた造語で、時代を切り拓く アートの地平を多くの人に感じ取ってほしいという願いが込められているそうです。出来立ての建物は外観も、内装も、どこもかしこもピカピカでした。
館内では3フロアに分かれて展示があり、6階から降りながら鑑賞します。で、今回は6階で繰り広げられている、アーティストと美術館の共同プロジェクト=ジャム・セッション・シリーズの第一弾となる、石橋財団コレクションx鴻池朋子の摩訶不思議な世界、『ちゅうがえり』展です。
広い展示フロアの中心に大きく繰り広げられた螺旋状に登る足組。上まで行くと、最後は滑り台で中心に向かって降りるようで、呆気に取られてしまいました。しばらく佇んで見ていると、実際滑って降りる人もいれば、降りない人も。内心、「なんだかついていけないな〜」と思ったのが正直なところです。そこで理解しようとするのを諦めて、周囲の壁に沿って展開されている展示に目を向けました。
それぞれのコーナーにテーマ別に展示されているようで、まずは一貫性があるようで無いような、無いようであるような…様々なスタイルの作品にどれも同じような顔があるもの。絵画、版画、その他…顔のコーナー。もちろん私には「何これ?」なのですが、それが何であるかは人それぞれで良いのかもしれません。中でもこれは…ドリームキャッチャーのような?何なのか、どうなっているのか、しばし眺めていました。
そして反対側のコーナーへ行くと、なんと逆さ吊り毛皮の嵐。なんだこれは〜!ステラ・マッカートニーが見たら激怒しそうです!いくら芸術でもこれは酷い!!と思いながら、ワナワナとかき分けて通過しました。
するとそこに説明が。これらの毛皮は全て北海道から送られてきた害獣駆除で殺された動物のもので、仲良くなった毛皮のなめし工場から送られてきたものだとか。昨今の日本では、猟師になる人はいてもなめし職人は激減しているので、多くの駆除された死骸はなめし作業をされないまま廃棄されているのだとか。動物の死体は「なめし」という工程を踏まなければ、腐敗や悪臭無しでは保存出来ないのだから。
鴻池朋子氏は、2006年にモンゴルで害獣として年間何万頭も殺される狼の毛皮を20頭分入手して作品を作り、以来毛皮が好きで、仲良くなった北海道のなめし工場から駆除された動物の毛皮を買っているのだとか。「次にトドはどう?」と言われているそうで、そのうち漁場を荒らして駆除されたトドの皮を使った作品が発表されるのかもしれません。
何をもって害獣と判断し、麻酔で眠らせて遠い山又は海へ戻す…という作業を省いて殺してしまうことを良しとしているのかは、ステラならずとも私も突っ込みたいところですが、鴻池氏は取り敢えず現状を受け入れ、なめし工場に仕事を与え、技術の存続の手助けをし、廃棄されるところであった動物の死骸を芸術にリサイクル?サスティナブル?といったところなのでしょうか。
なめされた皮に描かれた狐たち?狼たち?声は不気味というよりは美しく、見入ってしまいました。
次に、影絵のコーナーに見入りました。モーターで回りながら不思議な影絵を動かす作品がいくつか。どうも物語がありそうです。そばに説明があったのを見逃したのかな?よく分からないながらも、しばらく回る影絵に惹かれました。
そして、今回私にとって一番のお気に入り。『風が語った昔話』という作品です。縦2メートルくらいはありそうな壁一面の作品は、最初ふ〜んと思って眺め、やがて隣にあった説明(ストーリー)を読んで感動をして、もう一度作品に見入りました。
そのストーリーというのが本当に素敵で、え?この人は芸術家であり、作家でもあるの?という感じ。素晴らしいファンタジーの世界でした。書き写すと長くなるし、省略も出来ないので、写真をそのまま貼るので拡大して読んでみて下さい。
なんというファンタジーの世界!さらに、この作品は絵ではなく細かいハンドクラフト!手芸作品です。なんなんだ!この人は。
他にも同じようなハンドクラフトで描かれた作品が壁の両側一面に展示された通路があり、1枚1枚が懐かしい日本各地の伝承や思い出で、内容がとても興味深かったし、ストーリーもさることながらその糸や布で表現された作りに、時間の経つのを忘れて見入りました。このコーナーが一番私は好きでした。
とまあ、初めて行った美術館で、初めて知ったアーティストを、思いの外堪能しました。なんかスゴかった!浮世絵鑑賞の機会が多い昨今、とても新鮮でもありました。10/25(日)までなので、たまには現代美術もいかがですか?ウェブ予約チケットです。
http://www.artizon.museum/collection-museum/exhibition/detail/2
そんな週の一本は、『マイ・バッハ 不屈のピアニスト』です。 ああ、世の中本当に知らないことばかり。『20世紀最高のバッハの演奏家』と言われたブラジル出身のピアニスト、ジョアン・カルロス・マルティンスの自伝的作品です。うわ〜、こんな人がいたなんて。全然知りませんでした(涙)。
実在の人だし実話の映画化なので、私以外の誰もが知っている有名なストーリーなのでしょうね。この人、本当にスゴイ。女好きなのはアーティストのあるあるだしw 楽器演奏に対する執念もありがちだと思ったけれど、実際の音がもう!大感動してしまいました。
そもそもクラシックには弱いんですが、まあだからこそ、私はバッハといえばオルガンなイメージがありました。それがあなた!ピアノですよ。それもピアノ界のイングヴェイ・マルムステイーンか?的な!鬼気迫る速さ、激しさ。映画『ボーラプ』が大成功した要因の大きな一つであるオリジナルの声同様、この作品のピアノはジョアン・カルロスご本人の演奏だそうです。マジ半端ない。
キース・エマーソンがやってきて、「その手を動かしているのは天使か?悪魔か?」というシーンはさもありなん。指が3本しか使えなくなってから、リオ・パラリンピックの開会式で国歌演奏もしていたんですね。それも知らなかった。実際の映像はオリンピックの権利の関係で無いらしいですが、同じアレンジで国歌演奏をしている映像がありました。素晴らしいですね。
https://youtu.be/9at4RdwT2Yc
もともとクリント・イーストウッドが監督したかったそうですが叶わず。それで良かったと思いました。クリントの手を借りなくても、素晴らしい芸術はそれだけで成立しますから。いやあ、素晴らしかったな。ピアノ演奏も、不屈の精神も。トレイラー映像を見て下さい。こちら。もし私以外にもジョアンを知らなかった人がいたとしたら…、知って欲しいです。
https://youtu.be/Wu00ek3lZrg
…ということで、新たな感動が多かった週の最後には、期待通り感動の上書きだった『半沢直樹』最終回でした。今まで敵だと思っていた者たちも共に、最後は一丸となって大物政治家に1000倍返し。本当に気持ち良かったです。白井議員も、児嶋いえ笠松秘書もw、ラストのスッキリした笑顔が最高。やはり人間、自分の正義を貫くって大事ですね。「あばよ〜!」と去って行った大和田常務のひねくれた(?)たっぷりの愛もカッコ良過ぎ!
春馬くんショックをまだ引きずっているところに、竹内結子さんのニュースが入りました。花ちゃんが言ったセリフ「生きていれば何とかなる…」が染み入ります。私自身も今年を含め過去何度か「生きてさえいれば」と思って今まできているので、春馬くんにも竹内結子サンにも今や遅いけれど、残っている私たち皆が花ちゃんの言葉を胸に、ある意味何もかも軽く受け流してやっていきましょう。どうにかなります!!!
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