Amy's This Week
2023.01
1/9-15, 2023 美しきシモネッタ展と、『あのこと』
何気なく読んでいた雑誌でボッティチェッリを見つけてハッと息を飲みました。ん?どこかに来てるの?美術展見逃してた?と思ってよく読むと、丸紅が所蔵していたのだとか。それを久しぶりに公開しているそうで『1枚だけの美術展』というサブタイトルが。なんと。昨年からだったんですね。気付いて良かった。早速歯医者さんに行ったついでに、行って来ました。
私の美術愛の原点とも言えるのがイタリア・ルネッサンスです。そしてもちろん、ラファエロ、ミケランジェロ、ダヴィンチ、ベルニーニなど大好きですが、やはりルネッサンス、フィレンツェといえばサンドロ・ボッティチェッリの美女が一番に思い浮かびます。それは時にマリア、時にヴィーナスと役柄を変えますが、モデルはただ一人。このシモネッタですよね。
シモネッタはボッティチェッリにとってのファム・ファタルだったのでしょう。大雑把に言えば、彼が描く美女は全てシモネッタを思い浮かべて描いたのかもしれません。それほど、ボッティチェッリの美女は全て同じなのです。私はその顔が好き。つまり私もシモネッタが好きですw さて、ポスターでは白黒でしたが、中に入ればカラーのシモネッタを観ることが出来ました。髪型も、ドレスも、これぞルネッサンスですね。美しいの一言に尽きます。
1枚だけの美術展ということで、この作品以外は作品の経緯や解説、考察などが展示されていて、とても興味深い展示でした。価格も500円と良心的。まあ丸紅という巨大商社のメセナなのですから、無料でも良いくらいですよねw 一つだけ苦情を言うとしたら、ビルに入った瞬間暑い暑い!暖房効かせ過ぎです!ギャラリーは丸紅ビルの中なので、ビル全体が同じ温度なのだと思います。こんな大きなビルでこれほど省エネを無視した温度設定しているのですから、家庭で地球温暖化対策…なんて考えているのがバカらしくなります。せいぜい巨額の法人税を科して欲しいものだと思いましたw
さてシモネッタの特徴的なブロンドならではの儚げな目(当時はマスカラがなかったのでまつ毛がブロンドだと目がホワッと見えるのです)や細かくカールした髪から、前述したように多くのボッティチェッリが描く女性はシモネッタ、正確にはシモネッタ・ヴェスプッチに似ています。こちらは『歌う天使と聖母子像』。ベルリン絵画館で私が狂喜乱舞した作品です。この首をふにゃっと傾ける仕草がもうあまりにボッティチェッリ!天使たちも美しくて堪りません。
こちらは『若い女性の肖像』。フランクフルトのシュテーデル美術館所蔵です。まさに丸紅シモネッタの別ヴァージョンで、微妙に異なる髪型、ルネッサンス期の髪のまとめ方が興味深いです。とりわけシモネッタが好きだったのか、頭頂から額上部中央に向けてまっすぐパールを飾るのは現代では無いので、これはどうなっているのでしょうか。正面から見ると、おでこの上部中央に大きなパールが乗っているように見えますよね。素敵。まさにルネッサンス。
こちらはベルリン絵画館のシモネッタ像。3枚の横向きシモネッタの中で、一番髪型が質素に見えますが、まとめ方はとても凝っていますね。そして頭頂から額へ伸びるパールは変わらず。当時の貴族家庭には、毎朝髪を整えてくれるお抱えの美容師さんもいたのでしょうか。
丸紅以外のシモネッタ像はいずれもドイツにありますね。私がベルリン絵画館に行った時には、ボッティチェッリのヴィーナスが絵画館の顔になっていました。ボッティチェッリはドイツで人気があるのかな。
ベルリン絵画館にある背景が黒いヴィーナス像です。これはフィレンツェにあるヴィーナス誕生のヴィーナスだけを描いています。が、大きく異なるところがあります。こちらは重心が真っ直ぐ。普通に立っていますね。それにしても、このヴィーナスだけのヴィーナス。よく見ると髪型が、顔まわりは短めにカットされ、襟足の伸ばした髪は三つ編みにして前に垂らしているなどシモネッタそのものなんですね。
さて、こちらがフィレンツェにある『ヴィーナス誕生』です。ね、かなり重心が右側にふにゃっとなっていますよね。髪も風にたなびいています。これは西風ゼフィロスが左から風を起こしているからです。西風は春の到来を意味しているんです。
こちら『春』(プリマヴェーラ)です。花の女神フローラがシモネッタだと言われています。
でも丸紅にあった解説では、この左側にいる三美神(左から愛欲、貞節、美を表す)のうち、美の神がシモネッタと似たネックレスをしているというのです。今まで考えたこともなかったので、とても興味深いと思いました。そう言われてみれば、髪型も顔脇だけカットしていてシモネッタに似ていますね。とはいえ、実は登場する全ての女性がシモネッタに似ていると言えるでしょうw
そもそも、シモネッタ・ヴェスプッチはフィレンツェの騎上槍試合で優勝者を讃えた美の女神役で、そこで優勝したジュリアーノ・メディチと出逢い二人は恋に落ちたとか。シモネッタはすでに人妻だったのですが、当時のメディチ家に文句を言える人はいなかったでしょう。世紀の美男美女カップルです。が美人薄命。翌年にはシモネッタは22歳の若さで肺結核で亡くなりました。またその2年後にジュリアーノがパッツィ家の陰謀で殺されてしまうのです。
ボッティチェッリがシモネッタ像を描き始めたのは、若くして亡くなった美女を哀悼の意を込めて絵として残そうと思ったのかもしれないし、『春』や『ヴィーナス誕生』を注文したロレンツォ・メディチ(ジュリアーノの兄)は、弟や弟の愛した美女に似せて描くよう注文したのかもしれないですよね。ちなみに『春』の一番左に立つ若者がジュリアーノだと言われています。
これはウフィツィ美術館にある『東方三博士の礼拝』で、一番右端に立ち茶色の服を着てこちらを見る若者がボッティチェッリの自画像だと言われています。職人ボッティチェッリにとって貴族はそもそも階級が異なるし、ボスの弟の恋人シモネッタは、絶対に手が届かない存在でした。さてサンドロ、あなたにとってシモネッタは愛というより崇拝の対象だったのかな?
わずか1枚だけの美術展『美しきシモネッタ』展は、大好きなボッティチェッリの作品から、フォレンツェ、メディチ家その他ルネッサンスの美しい上澄みだけに思いを馳せたっぷり楽しむことが出来ました。上澄みだけと少し嫌味な言い方をしてしまったのは、当然ながらルネッサンス期にも多くの闇(病への無知、血なまぐさい抗争など)があったからです。美しい男女はいずれもその犠牲になりました。が、こうして数百年経ったのちに、美しい部分だけが残るのはそれこそ画家ボッティチェッリの功績です。これぞ芸術家の真骨頂。ブラボー!ボッティチェッリ!そしてシモネッタが東京にあることに感謝し、丸紅が今後も作品を公開し続け、社内設定温度を最低でも3度くらいは下げることを祈りますw
そんな週の一本は、『あのこと』です。
舞台は60年代のフランス。「あのこと」とは中絶のことで、予期せず妊娠してしまった女子大生が多いに悩むストーリーです。この時代のフランスの事情は全く分かりませんが、もしかしたら現代でもアメリカの地方都市などでは普通にありそうな出来事です。いや、日本でも?フランスは今は違うのか?
各国の中絶事情まで調べたくなってしまいましたが、やめておきました。突っ込んで調べたところで私には何も出来ないから。たまたま時間の都合が合ったので観ましたが、シリアス過ぎて、主人公が可哀想過ぎて、観ていて辛かったし、鑑賞後感もモヤモヤのままでした。
ただ作風がさすがフランスだからでしょうか。問題提起というよりは、淡々とこの時代の一人の少女の出来事を追った作りだったので、ある意味ドキュメンタリー番組を見たような感覚で、「ああ、そういうことがあったのか」と終わらせることが出来たのは救いだったかもしれません。
現代のアメリカでは託児所併設の高校があるとニュースを見たことがあるし、日本の少子化問題では一つの大きな課題が中絶を減らし、こうした少女たちを国レベルで救うことだと思うので、最近の岸田さんがいう『異次元の少子化対策』を提示する関係者には観て欲しい作品かもしれませんね。
週末は珍しく雨だったので、久しぶりにアウトレットモールへお買い物に行きました。欲しかったモンベルのタウン用バックパックが買えてご機嫌!ランチは超久しぶりなぼてじゅうを戴きました。美味しかった!
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