Amy's This Week
2021.10
10/18-24, 2021 ブダペスト国立工芸美術館名品展と、『最後の決闘裁判』
先日友人と浜離宮庭園に行った時に近くを通ったパナソニック美術館。その時に予告を見て、ぜひ行こうと約束していました。美術では圧倒的に絵画好きなため、私一人だったらパスしていたかもしれません。なので、意外な感動がありました。ブダペスト国立工芸美術館名品展です。
ヨーロッパの国々の中で、周辺のオーストリア、チェコ、スロバキア、ルーマニア…と行ったのに、ポツンとハンガリーには行っていません。そこにこんな素敵な建物=国立工芸美術館があるんですね。ヨーロッパはアメリカとは違い、美術館は美術館のために建設されたわけではなく、多くは宮殿など昔の建物の改築がほとんど。ルーブルしかり、エルミタージュしかり、バチカンしかり。が、ここハンガリー国立工芸美術館は、自国の工芸作品を収蔵するために国家をあげて建設した建物なんですって。建物自体が一番の工芸品のような美術館。いつか行ってみたくなりました!
館内は撮影禁止なので、写真は公式サイトからです。観覧し始めて、妙に日本的な作品が多いと思ったら、サブタイトルが『ジャポニズムからアールヌーヴォーまで』でしたw そのジャポニズムがとても素敵で感動したので、気に入った作品をいくつか。
これはエミール・ガレの『菊花文花器』(1896)です。エミール・ガレって、ガラスなの?と思ってよ〜く見たら確かに透明感がありました。なんか凄い。
こちらはジョルナイ陶磁器製造所の『結晶釉花器』(1902)。陶磁器製造所というので安心の陶磁器ですw だって、陶磁器のように見えるガラス製品が少なくないのでw これも色合いが日本的で素敵。
こちらもジョルナイ陶磁器製造制作の『黄色のヤグルマギク文花器』(1900頃)です。この柄はもう完全に日本じゃないですか。陶磁器類に疎い私は全く知らなかったのですが、ハンガリーの三大磁器メーカーがヘレンド、ジョルナイ、ホロハザなんですね。ヘレンドだけ聞いたことあったけど、ハンガリーだったとは。アウガルテンの小皿はウィーン土産で買いましたよ!でもあと馴染みがあるのはウェッジウッドくらいかな。食器好きの人には笑われちゃいますね〜www
おお〜!と思わず声が出そうになったのがこちら。ルイス・カンフォート・ティファニー通称LCTの『孔雀文花器』(1898以前)。声が出そうになったのはもちろん、知っている名前だったからですw ティファニーはアクセサリーだけではなく、こうした花器も作っていたんですね。本当に孔雀色です。
こちらはドーム兄弟の『多層間金箔封入小鉢』(1925-1930)。ドーム兄弟?って、まるで知っていて当たり前的な表示w 調べてみたら、有名なガラス工芸家の兄弟なんですね。え?ガラス?少し前に『三菱の至宝展』で観た国宝の『曜変天目』を思い出しましたよ。美しい!でもこちらはガラスだなんて。「高そう」としか思えない私は心が貧しいなぁw
こちらもガラス。エミール・ガレの『洋蘭文花器』(1900頃)です。これは透明感がはっきりしているのでガラスだとは分かりますが、やはりこの色合いが素晴らしくジャポニズム!こんなガラスの花器を信長に献上したら、国を一つ頂けたかもしれないですねw
こちらも驚きのガラス製。LCTの『植物文栓付香水瓶』(1913頃)です。これはティファニーらしく化粧セットの一部で、他に同じ仕様のローションボトルやクリーム容器、ブラシの柄などがありました。壮観!
これら日本に影響を受けたジャポニズムは、1862年のウィーン万博に初めて出品した日本からの荷物に緩衝材として用いられた浮世絵でヨーロッパの文化人たちが日本に興味を持ち、その後渋沢栄一も行った1867年のパリ万博で日本の工芸品が大人気になって一気に日本らしさが流行したそうです。そして明治になってからの1873年ウィーン万博では新政府がさらに日本の手工芸品を売り込み、ヨーロッパのジャポニズムが頂点に達したんですね。芸術のユニヴァーサル化。あ、ジャポニズムと言ってしまうのは英語でした。ここではフランス語の『ジャポニスム』と呼ばなくてはねw
さらにアール・ヌーヴォー作品もたくさんあり、とても楽しめたブダペスト工芸美術館名品展でした。興味深いと思ったからこそ尚のこと、実際にこの美術館に行ってみたくもなりました。ヨーロッパの美術館って、建物そのものから芸術品ですからね。いつか行けるでしょうか。
それにしても…これは日本人ならではの感性だと思いますが、『アール・ヌーヴォー』と聞くととてもお洒落でセンスある響きですが、英語にして『ニュー・アート』と聞くと、別になんでもないというか、「それで?」くらいな感覚になりませんか?www なんか、英語って軽いwww 以前デトロイトでたまたま『ツタンカーメン王展』をやっていて、『ツタンカーメン王』が英語だと『King Tut』で「キング・タッ」?ww なんだかとても拍子抜けしたことを思い出しましたwww
汐留パナソニック美術館でのブダペスト国立工芸美術館名品展は12/19までです。汐留は、渋沢栄一たちがヨーロッパで見た鉄道を初めて日本に敷いた鉄道発祥の地でもあります。すぐ隣に旧新橋停車場駅舎や鉄道歴史展示室(無料)もあるので、セットでぜひ。
https://panasonic.co.jp/ew/museum/
そんな週の一本は、巨匠リドリー・スコットの『最後の決闘裁判』です。 私が最も愛する映画監督の一人であるリドリー・スコットと、これまた愛するボストン小僧コンビのマット・デイモンとベン・アフレックがタッグを組んだのですから、これは観ないわけにはいきません。いや、リドリー・スコット作品というだけで、洋画ファンなら誰でも観なくてはいけない作品ですよね。
ストーリーは実話ベースらしいです。UCLAの歴ヲタ教授が様々な文献を元に調べ上げた事件を元にしているそうで、やっぱり中世ヨーロッパは面白い!『暗黒の中世』と言われるほどこの時代は情報が乏しく、古代ローマが滅びて以降ルネッサンス以前の時代は『ロビンフッド』と十字軍関連、ケン・フォレットの『大聖堂』シリーズくらいしか映像作品が見当たらないので(あくまでも私見ですw)、こうした14世紀の実在のお話というのはそれだけでとても興味深く、夢中で掘り下げたヲタ教授とお友達になりたいくらいですww
リドリー・スコット監督は黒澤明ファンだそうで、三人それぞれの視点からなる三部構成は『羅生門』と同じなんですね。私は『羅生門』を観ていないので知りませんでしたが(^^; で、主人公マット・デイモン演じるジャン・ド・カルージュの視点から始まり、次にライバルのアダム・ドライバー演じるル・グリの視点、そして最後に妻の視点…と進み、それぞれを観ていくにつれ、こちらも真実が分かっていく面白さがあります。妻編を観てからもう一度夫編を見直したくなります。それほど、同じシーンでも妻の表情が異なり、改めてユリウス・カエサルの「人は見たいと思うものしか見ない」という言葉を思い出しました。
俳優陣では、無骨な騎士マット・デイモンも、スマートで気品あるバカ貴族ベン・アフレックもハマリ役。いやあ、ブロンドのベン・アフレックなかなか美しかったですよww 『インタビュー・ウィズ・バンパイア』のトム・クルーズを思い出しましたww 意外だったのはアダム・ドライバー。『パターソン』が印象的で真面目なイメージが強かったし、『スター・ウォーズ』での悪役は観ていないので、なかなか憎たらしい悪役に馴染めませんでしたw とはいえ、現実では悪人っていかにも悪人風というわけではないですよね。こうした友人・知人が実は…というパターンが実際には多いと思うので、アダム・ドライバーの演技は素晴らしい!ということでしょう。
そしてこの作品の真の主人公と言える妻役のジョディ・カマー!どこかで観たことがあると思っていたら、なんとTVドラマ『キリング・イヴ』でエミー賞を獲ったあのヴィラネル役だったんですね!世界一チャーミングなサイコパス暗殺者。この『最後の決闘裁判』ではそのサイコパスイメージとはまるで違う真面目で献身的な妻役ですが、やはりヴィラネルがダブってくると、裏があるように思えてしまいますw 最後に子供が生まれブロンドで、観ている我々に「ああ、夫の子供で良かったね」と思わせますが、いやいや、妻がブロンドなら夫が黒髪でもブロンドが生まれることもあるでしょw と、裏をかきたくなりました。これぞ暗黒の中世。誰にも分かりませんw
最後といえば、字幕で主人公のその後が「十字軍に参加して戦死」と出ましたが、ん?14世紀で十字軍?と、悩みました。とっくに十字軍は終わってるでしょ?と思いあとで調べたら、『ニコポリスの戦い』で。『ニコポリス十字軍』と称されることもあるそうですが、単に『十字軍』と表すのは少し乱暴だと思いました。字幕だけのことで英語ではNicopolisと付いていたのかな?ま、普通こんなこと誰もこだわらないのかもww
中世ならではの価値観はあまりにも野蛮だし、コンプライアンスなんてあったもんじゃない男尊女卑、モラハラ、パワハラなどのオンパレードながら、レイプ犯はいつの時代でも「やっていない」と言うし、男のメンツ問題や嫁姑の仲問題も普遍なので、観終わるとどこか、ああ、現代も中世の延長なんだな、と思えたりしました。そして最後になりましたが、『グラディエーター』『ローマ』を彷彿させる御大リドリー・スコット監督の決闘シーン!史実だとトドメは首(頚動脈を?)切ったようですが、監督の手にかかれば…wwww もう恐ろしさと面白さで訳分からなくなって大笑いしてしまうさすがなキメ方でしたwwww 鉄板です!!!
この週は免許の更新や、期日前投票などにも行ってきました。いずれもそこそこ混んでいて、コロナが落ち着いていなかったら不安だったかもしれませんが、安心して行けました。映画も『ノー・タイム・トゥ・ダイ』に続き、今週の『最後の決闘裁判』など、昨年のコロナ禍では考えられなかった大作が公開されるようになってきて、徐々にコロナ収束に近づいている?と思えますが、同時に強く「気を許しちゃダメ!」とも思いますね。その感覚、しばらくは大事にしていきたいと思います。
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