Amy's This Week

2022.04

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2022.04.18

4/11-17, 2022 美術館の春まつりと、『ナイトメア・アリー』

今年もこの時期になりました。MOMATこと国立近代美術館で開催される『美術館の春まつり』です。と言っても美術館に行ったのは今週ではなく先週でした。先週はグラミー賞のことを書いてしまったので周回遅れになりましたが、今年も都心の春を満喫してきましたよ。

昨年初めてこの『美術館の春まつり』に行きとても良かったし、日本美術や近代美術には詳しくないので、今年も新鮮な感動を期待してとても楽しみにしていました。もちろん、期待が裏切られることはなく大満足。特にいいなと思った作品を挙げますね。

まずは美しい梅が月夜に浮かぶ山口蓬春の『残寒』(1942)です。私の大好きな紅白入り混じって咲く梅の木ですが、注目したのはその制作年でした。1942年?真珠湾攻撃を第二次世界大戦のスタート時だとすれば、大戦がすでに始まっている中、この作品を手がけていたのですね。まだ日本軍がイケイケの頃だったのかも?とも思いましたが(日本軍は1942年にミッドウェイで大敗するも、そのニュースは当時国民には伏せられていたはず)、果たして作者はどんな思いで描いていたのでしょうか。安全な地で戦争なんて我関せずの芸術家として制作に没頭していたのか、それとも嫌な予感の中平和への祈りを込めていたのか…。薄闇の中にも美しく佇む梅の木に、私は後者であった様に思えてなりませんでした。

この豪華な6曲1双の屏風は菊池芳文の『小雨ふる吉野』(1914)です。桜の名所である吉野の、およそ100年前の光景。桜の名手と謳われた作者は、まるで油絵の様に、桜の花びらの下方に絵の具が溜まる様に一つ一つ描き込んでいるので、花びらが雨の雫を乗せている様に見えるのです。これは実物を見せてもらわないとわかりません。なんて美しい!

こちらは同じく6曲1双の屏風で川合玉堂の『行く春』です。川があると思ったら、舞台は秩父の長瀞とのこと。全体に桜の花びらが舞い散る様子は、まさに行ってしまう春を表していますね。

美しい桜のアップです。本当に綺麗で綺麗で、しばらく眺めていました。こんなに桜の花びらが舞い落ちていると、やっぱり頭の中にはあの曲が〜♪ 〜桜舞い散る中に忘れた記憶と〜君の声が戻ってく〜る〜 吹き止まない春のっ風あの頃のま〜ま〜で〜♪ あははw 静かな美術館の中で、自分だけ内心ノリノリでしたねwwww

こちらは松林桂月の『春宵花影図』です。墨一色のはずなのに、花びらがほのかなピンク色に見えるのは、日本人DNAの為せる業でしょうか。第二次世界大戦勃発2年前にニューヨークで開催された万国博覧会に出品され、個人コレクターやボストン大学その他多くから購入希望があったにも関わらず謝絶したそう。その作家の意地は見事で、お陰で今も日本に残る宝の一つですね。

こちらは跡見玉枝の『桜花図巻』(1934)です。全25面に渡り、各種の桜がその名前と共に描かれている芸術的な図鑑と言えそうな作品です。昨年も展示されていて、1面ずつじっくりと観ました。非常に興味深いのですが、残念ながら、達筆過ぎて時々桜の名前が読めないものがあり、一面ずつ活字で説明を付けてくれたら…と思いました。去年も、今年もw

さて、桜作品をたっぷり堪能してから常設展も楽しみました。わぁ!新たな収蔵品としてボナールだぁ❤️ 『プロヴァンス風景』。ボナールらしい色彩ですが、私にはボナールの風景画は珍しい気がしました。これじゃあ細か過ぎて猫は探せませんねw でもいつまでも飽きずに観ていられました。

驚いたのはこちら。長谷川利行の『新宿風景』(1937)ですって。え?これ日本なの?そー言われてみれば、ちょっと漢字風な文字が見えてきました。見れば見るほど日本ぽさが見えてくる様な気はしますが、その画風からかヨーロッパのどこかに見えてしまいます。

すぐ思い浮かべたのはモネの『モントルギュイユ街』でしたが…全然違いますねwwww

これは?ずいぶん前のプラダ、ピトレスク・シリーズのパリ。ん〜、これも違うか〜www

とにかく不思議な魅力のある作品だと思い、長谷川利行を調べてみたら…なんとも強烈な個性の人だったんですね!その画風から、てっきりパリに留学でもしていたかと思いきや、浅草の貧民街で絵を描くか酒を飲むか…といったほぼ自滅的な人生だったそう。不謹慎ながら、すごく魅力的な芸術家じゃないですか!非常に速筆で活動期間の割に作品数が多く、白を好んで多用した…などからか『日本のゴッホ』と呼ばれることもあるようで、これは長谷川利行覚えておかなくては!!

というわけで、今年もたっぷり楽しんだMOMATでした。ここは立地そのものが、桜を楽しむためにあるようなもの。今年は昨年の逆コース、皇居沿いの美術館前から武道館前を通って千鳥ヶ淵の桜を楽しみながら帰りました。この週報をご覧下さっている皆様にとって、春に武道館ライヴがあればいつもご覧になっていた見慣れた景色でしょう。でもここ2年以上遠ざかっていらっしゃるのでは?文字通りの春爛漫写真をいくつかどうぞ!

 

そんな週の一本は、やっと観れた『ナイトメア・アリー』です。

ギレルモ・デル・トロ監督作品というだけで、ある程度想像は出来てしまうほど、デル・トロ作品は暗くて、不気味で、でもそれは人間の内面から醸し出されるもので、一番不気味なのは人間そのものなのだ…的なダーク・ファンタジーです。もちろん、『ナイトメア・アリー』も御多分に洩れず。私は過去作品では『クリムゾン・ピーク』が大好きでした。

今回はさらに俳優陣が豪華絢爛じゃないですか。ケイト・ブランシェットにウィレム・デフォーですよ!もちろんブラッドリー・クーパーやルーニー・マーラも大人気ですよね。私はブラッドリーはガガとの『アリー/スター誕生』での飲んだくれ役が好きになれなかったことがあり、イマイチなところ、今回も結局そんな感じになり…もうこの人はこれが取り柄なのかな?と思うことにしました苦笑。


ルーニー・マーラも、初めて観た『ドラゴン・タトゥーの女』でのやさぐれたリズベットが強烈過ぎて、実は育ちが良いと聞いたり、その後『キャロル』での純真無垢な役柄を観たりしたけどどうしても馴染めませんw 私は最初のイメージを引きずるタイプのようですねw

と考えれば、私がケイト・ブランシェットが好きな理由ははっきり『エリザベス』です!地味ながら『シャーロット・グレイ』も良くて、観るたびに泣けてしまいます。たくさんいるケイトの中でも一番好きw

話は逸れましたが『ナイトメア・アリー』は、さすがデル・トロ監督!私は凄く好きでした!でもとにかく画面が暗いです。文字通りダーク・ホラーであり、フィルム・ノワールww これはシアターで観ないと疲れちゃうかもしれませんねw

もちろん、暗いのは映像の色の問題だけではなく、時代の闇の部分、人間の心のドス暗い部分も存分に見せてくれ、デル・トロ監督の本領発揮です。過去作品のような本当の(?)幽霊とか、怪物なども、実は人間が作り出したものとしているので、これはファンタジーというよりむしろダークなドキュメンタリーかも??この時代ならありそうですからね。

アカデミー賞では作品賞、撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞の4部門にノミネートされていました。いずれも受賞ならずでしたが、私は『コーダ』よりはずっと好きでした!って、言っちゃったwww

 

さて、山へ 行くようになって以来、それまで全く知らなかった綺麗な春の景色を楽しんでいます。今週は偶然というか奇遇というか狙ってというか…w 武蔵五日市の今熊神社へ二回も行ってしまいましたw 本殿は山頂にあり、裏参道を降りれば素敵な滝があり…と、とても魅力的な場所です。きっとまた行くと思っていますww