Amy's This Week

2020.05

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2020.05.12

5/4-10 緊急事態宣言延長で、お気に美術館② – ウフィツィ!

今年はGWといっても、いつ始まっていつ終わったのか、全く実感がありませんでしたw そんな最中に、緊急事態宣言延長の発表。ショックとはいえ、誰もが「やっぱりね」と思ったのではないでしょうか…。

悩んでも仕方がないので、得意の現実逃避w 今週はどっぷりと好きな美術館に想いを馳せたいと思います。大き過ぎる美術館は大変なので後回しして…w バチカンかな〜?と思いつつも、やはりウフィツィにしましたw 今でこそローマLoveの私ですが、もともとイタリアが特別な国になったのは、ルネッサンス美術にハマったからでした。なのでまずは屋根のない美術館と言われる町フィレンツェにあるルネッサンスの殿堂、ウフィツィ美術館です。

ウフィツィという名前は、英語ならオフィスということ。メディチ家が市政の執務にオフィスとして利用した建物が、やがて美術館となりました。なので、ヨーロッパの伝統的な美術館は大概元宮殿なことが多いので、やたら広く造りが入り組んでいて、無駄に歩き回る羽目になることが多いのに、このウフィツィは非常に機能的な造りになっているところが好きです。コの字型の中央に立った風景は、16世紀の丸の内オフィス街ですね。

生まれて初めてイタリアへ行った時、もちろんウフィツィにも行きました。その時はボッティチェッリのお部屋に私一人で、この『プリマヴェーラ(春)』に対峙できたことが一番の思い出です。やはりウフィツィと言えばボッティチェッリ。この『プリマヴェーラ』は右から左へ物語が進みます。春を呼ぶと言われる西風(ゼフィロス)が、見初めたニンフに頰を膨らませて風を吹きかけ、するとニンフ(クロリス)は口から花を吹き出し、フローラ(花の女神)に変身するのです。つまり右から二番目と三番目の女性は同一人物。

そのゼフェロスはフローラに花園を与え、そこに三美神が舞い、愛の女神ヴィーナスが中央で全体を愛で包みます。また左端の神の使いヘルメスは、神の国に来た春を人間界にも運びます。

この絵はもともと、メディチ家のリッカルディ宮殿内、居室の壁に飾られていたそうで(その後別荘に移設)、当時は、飾る予定の壁を先に決めてからそこに合わせて絵の注文をしたそうなので、右から物語が進むのは、この絵の右側に部屋へ入るドアがあったのではと言われているのです。なんて贅沢なお部屋!

となると、もう一つのボッティチェッリ代表作でありウフィツィの代表作でもある『ヴィーナス誕生』は、左からゼフェロスが既に妻となった花の女神フローラと共にヴィーナスに西風や花を吹きかけ、キプロス島のビーチに流れ着いたヴィーナスは全身が風に吹かれて右に傾いているところを、陸地から時の女神ホーラが絹の布で包み込み美を永遠のものにしようとします。物語は左から進んでいますよね。ということで、この絵が最初に飾られた時は、絵の左側にドアがあったのか?ということになります。もし、ドアを開けて右の壁に『プリマヴェーラ』、左の壁に『ヴィーナス誕生』が飾られた部屋で生活をしていたのだとしたら…?ロレンツォ・メディチが、ロレンツォ豪華王と呼ばれたのも当然な気がしますね。

常に「私は彫刻家だ」と言っていたというミケランジェロは、その頑固さが私は大好き! 彼自身は楽しくなかったかもしれないけれど、ウフィツィにあるミケランジェロの絵画『聖家族』は特別な存在です。完成したパネル画としては世界唯一の存在だし、彼の絵画としては超有名なバチカン、システィーナ礼拝堂の天井画・壁画は、実際行くと遠い、薄暗い、大き過ぎる…で、全然直接は良く見えません。なので近くではっきり鑑賞出来る唯一の絵画作品とも言えます。

また当時そのままのオリジナルの額は、ミケランジェロがデザイン、指導したと言われています。これも超珍しい。よく見ると、5人の頭が飛び出していて、これも面白い。凝った文様は左右対称ではなく、額だけでずっと見て入られますww

キモカワで有名なカラヴァッジォの『バッカス』もここウフィツィにあります。中性的な顔立ちの割には逞しい腕で、カラヴァッジォの込み入った(?)好みが伺えますよねww でも見所はカラヴァッジォの細かい静物描写で、頭に飾られたぶどうの実や葉、手前カゴの中の山盛りフルーツ、そしてワインの入ったカラフェやグラスのそれぞれの質感!

カラヴァッジォ作品は他に『メデューサ』もあります。儀式用の盾に描かれたので丸く、光の当たり方で飛び出しているように見えますが、それもそのはず。ウフィツィで本物を見ると、実際に凸面に描かれていることが分かります。ギリシャ神話の中で、無数の蛇からなる髪を持つメデゥイーサの頭を盾に付けた話があるからで、その目を見ると石になってしまうとか。確かにこんな盾を向けられたら敵は怯みそうですよねw 実際に中央が飛び出しているので、本当に血が垂れているように見えるし、蛇たちは動いているように見えます!

第18室は、唯一『トリブーナ』と名前のついた八角形の特別なお部屋です。元々はオフィス棟であったウフィツィの中で、唯一初めから美術品を展示することを目的として造られたお部屋で、天井のドーム、壁、大理石の床、中央に配置された同じく八角形のテーブルなど、展示された美術品以外のお部屋そのものを、多くの芸術家が作ったとか。

前述したように、多くのヨーロッパの美術館・博物館は元が宮殿なので、どの展示室もぶっちゃけくどいほどの装飾に溢れています。美術品を展示しないで、素のお部屋そのものを公開してくれた方が、よほどゆっくり宮殿を鑑賞できるのでは?なんて、庶民の私は思ってしまうくらい。なので、何軒か観て回るとだんだん飽きてしまうんですよねww 鑑賞疲れするというか(^^; そんな中、ウフィツィは機能的な造りの建物なので、集中して作品を観ることが出来るのが良いんです。といっても、廊下の天井などキリなく見所満載ではありますがww

そんな中、このトリブーナは期待通り(?)の貴族テイスト溢れたお部屋で圧倒されます。床も芸術品だからか、中に入ることは出来ないので入り口から覗き込むだけです。天井から床までぎっしり美が詰まっていて、天井のドームは、インド洋から取り寄せた真珠貝6,000個を使っているんですって。あとで拡大してじっくり見ることが出来るように、ひたすらボケずに撮れるよう撮影に集中してしまいますww

そんなお部屋そのものが美術品のトリブーナ。時々「え〜、絵が遠くて良く見えない!」なんて言って、ちょこっとお部屋を覗いてすぐ離れてしまう人がいますが、前の人がそれだったらラッキーw ここは壁に飾られた絵画など気にせず、じっくりとお部屋そのものを上から下、ぐるっと一周、舐め回すように眺めて楽しみましょうwww

そして、ダ・ヴィンチ好きなら絶対欠かせない『受胎告知』と『キリストの洗礼』が面白いです。

『受胎告知』はダ・ヴィンチ作、『キリストの洗礼』はヴェロッキオ作と案内されることが多いですが、若かりし頃のダ・ヴィンチはヴェロッキオの弟子として絵画の修行をしていたので、どちらも共作なんですよね。さらに他のヴェロッキオの弟子も加わっているそう。

『受胎告知』では、左の受胎を告知する人=ガブリエルと背景を、『キリストの洗礼』では左側の子供(天使)二人を、ダ・ヴィンチが描いたと言われています。そう思って見ると、確かにそう見えてきますww 『受胎告知』のガブリエルの羽がとてもリアルで、ダ・ヴィンチの科学的な観察眼を思わせ、背景は『モナリザ』を思い出します。

でも、背景の手前で横並びの、まるでディズニーランドのトゥモローランドにある木のように(笑)カットされた木々は、なんかちょっと違うな、と見えますよね。

『キリストの洗礼』に至っては、さらに多くの違和感が集約された作品に見えます。天使たちと、キリストやヨハネの髪質が全く違って見えるのは、天使はダ・ヴィンチが描いたとはっきり分かっているから良いとして、師匠のヴェロッキオが描いたにしてはあまりに稚拙に見える左端のシュロの木や、ヨハネの上に伸ばした腕…なんかとても変ですw きっとこれらもダ・ヴィンチ以外のお弟子さんたちが描いたのかな。なんて思いながら鑑賞するのがとても楽しい初期の、20歳頃のダ・ヴィンチ作品です(一部ですが)。

ということで、大好きなウフィツィ美術館の『これだけは絶対見ておけ!』作品を並べてみましたw もちろん、他にも名作は沢山あるわけですが(ラファエロもありますが、ラファエロは翌日ピッティ宮殿でじっくり楽しみますw)、実際に美術館へ行くと、対象をある程度絞らないとただ疲れ切ってしまって、結局何も印象に残らずに終わってしまう…とか、ツアーなどで行くと一点ずつ丁寧に見ていたら時間切れになって、後半はほとんど観ずに出る羽目に…などの悲惨な結果に終わることが少なくないです。なので、なるべく自分なりに絞って鑑賞した方が楽しめるコツになります。

今回は、思い切り気持ちをフィレンツェに向けました。こうしているだけで、Stay Homeもとても楽しくなります!旅が出来ないので、イマジネーションを駆使することが大事。フィレンツェに行ったことのある皆様、3年前にエアロスミスを観るTPに参加された皆様、フィレンツェの街を思い出してみて下さいね!ではまた来週。勢いに乗って、次週はウフィツィ以外のフィレンツェ案内です!