Amy's This Week

2022.10

18
2022.10.18

10/10-16, 2022 ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展と、『ソングバード』

2020年春以降コロナ禍となり全く先が見えなかった中、思い切り良く同年10月から今年の春まで全館休館して館内施設整備をしていた国立西洋美術館。その先見の明は素晴らしかったですね。私が日本一好きな美術館です。これほどの期間行かなかったのは、何十年ぶりかな〜。

ということで、リノベ後初で国立西洋美術館へ行って来ました。ピカソは『大』ファンというほどではないし、ベルクグリューン美術館って知りませんでした。さて、どんなかな?

ベルリンといえば、2回目に行った時に念願の国立絵画館へ行ったのですが、もうその素晴らし過ぎるラインナップに途中から小躍りしそうになったっけww あまりにも良くて、美術館のスタッフさんにその感動をまくしたてて笑われましたw そう、ベルリンって凄いんですよ。ただ…、その収集方法はどうだったのかな〜?とビミョーな思いも抱いてしまうわけです。ま、それを言ったら、ルーブル美術館だってナポレオンの略奪品が中心ですけどねw

なんて思っていたところ、解説を読んだらびっくり。ベルクグリューン美術館の名は、美術商のベルクグリューンさんのコレクションだからなのですが、なんとベルクグリューン氏はユダヤ人。あら、じゃあナチスの略奪品じゃないんですね。ちょっと安心しましたw

最初にそう知ったので気持ちは晴れやか。久しぶりの国立西洋美術館に入りました。するともう、めちゃくちゃ良かったのです!以前イスラエル美術館展でもそうでしたが、行ったことのない美術館、知らなかった美術館には感動ときらめきがいっぱい!今回これだけ珠玉の作品が揃ったのは、ベルクグリューン美術館がリノベ休館しているからだそうです。以前六本木の新国立美術館がメトロポリタン美術館の休館時期に合わせ名作をごっそり借り出し展示してくれて感動したのと同じ。これ素晴らしいですよね!あ、じゃあここ国立西洋美術館もコロナ禍のリノベ期間に世界のどこかに貸し出していたのかな?美術業界はコロナ禍も忙しく動いていたんですね。

ということで、大感動過ぎたので、今週はピカソの作品だけ、おっ❤️と思った物を挙げて行きますね。嬉しいことに写真撮影OKなんですよ(例外を除く)。まずはピカソの水墨画w 『眠る男』です。水墨画というのは冗談ではなく、本当に墨で描かれているのです。よく考えればかなりエロティックな場面でしょうが、さっぱりあっさりした感じはやはり墨のせいでしょうか。

『座るアルルカン』。背景は鮮やかな赤なのに、アルルカン自体は青の時代っぽい雰囲気があります。描かれた時期を見てみたら青の時代を抜けた翌年頃でした。移行期、過渡期の作品と言えるのかな。道化師がふと暗い表情をした瞬間を捉え、その沈んだ姿を鮮烈な赤で囲ったところに、アルルカンの秘めた情熱を感じる気がしました。

一瞬セザンヌかと思いました!『洋梨とリンゴのある果物鉢』。これほどストレートにセザンヌ愛が見えるピカソ作品は他に無いのでは?もちろん、よく見ればピカソらしさがたっぷりです。私としてはとても新鮮な驚きを抱いた作品でした。

うわ〜これもピカソなんだ!とトキめいたのが『一房のブドウのある静物』です。この立体感はなに?ゴッホだったら絵の具の厚塗りかもしれないけれどピカソは?と思ったら、何と「木屑」ですって!これは驚き!この作品は、「油彩、木炭・木屑、厚紙」で出来ているそうです。そう、キャンバスでもなく。なんか唐突ですが、異なる素材を合わせた作品ということで横尾忠則さんを思い出しました。どちらも天才…ということですね〜。ホント面白い!

『窓辺の静物、サン=ラファエル』です。おお〜この爽やかさは何ww 一見ボナールのような?ん、ボナールとはほぼ同時代なので影響を受けたとかではなく、この頃はこうした海の見える部屋を描くのが流行ったのでしょうか。よく見ると、額縁まで利用して窓枠までを遠近法で見せる緻密な計算がありますね。それに対して中央のテーブル(?)の自由さったらもうピカソの真骨頂w パステルな色合いが可愛いです。

と思ったらこちらは強烈な色合い。『彫刻家と彼の彫像』です。一瞬どれが彫刻?と思いましたw この彫刻家は裸になって仕事しているの?ww また彼が肘をかけている巨大な頭部も彼の作品でしょうか。今更ですが、ピカソの作風の幅の広さに驚きます。

『踊るシレノス』。シレノスはディオニュソス(バッカス)と共に地中海沿岸地方にブドウの栽培方法を教えた森の精霊。お腹の出たオヤジで、いつもワインを飲んで酔っ払って騒いでいたらしいけれど、この作品は釣りをしているんですかw 大漁で大はしゃぎ的な?w 貴族出身の妻オルガとの結婚生活がしんどくなり愛人を作った頃。私生活はいろいろ大変というか面倒(というと女性たちに失礼ね)な事が多い時に、こうした作品に没頭するのは現実逃避で最高に幸せな事だったでしょうね。苦笑。

おお〜っw 期待通りのピカソです。『雄鶏』。今にもコケコッコ〜!と甲高い鳴き声が聞こえてきそうです。木炭で描いた上にパステルを重ねているんですね。年齢を重ねキャリアを重ねても、常に精力的に新たな技法で描き続けるピカソの原動力はどこにあったのでしょう。まあそこが天才という事なのでしょうね。

『水差しを持ったイタリア女』。これは紙の上に鉛筆一本で描かれています。こうしたシンプルな描き方こそ、天才ぶりがうかがえますよね。消しゴムを使って何度も描き直した様子が見受けられず、どの線も一気に描かれているようです。腰掛けている長椅子(?)の線がビミョーにズレているのが良いですね〜。本当にササ〜っと描いてしまったんでしょうね。凄い。

出ました。『花の冠をつけたドラ・マール』。ピカソのミューズですね。ピカソには生涯何人もの女性がいた中で、ドラは同じ芸術家として一番ピカソにインスピレーションを与えた女性だったのではないでしょうか。色チョークと鉛筆で描かれたこのドラ・マールは、素早く大胆に描かれた首から下に対して、顔は非常に丁寧に写実的に描いているところが、ドラへの愛情を感じました。

そして、この展覧会の顔となった『緑のマニキュアをつけたドラ・マール』です。制作年は1936年なので昭和11年ですよ。その時代で緑のマニキュアって、やはりドラは独特の感性を持った芸術家だったんですね。美しかったんだろうな〜。ピカソの愛した女性の中で、唯一自立していた女性だったように思います。この時代での緑のマニキュアが、自立した女性のプライドを表しているような気がしました。油彩ながら、極限までシンプルに描かれているのがとても魅力的な作品です。

『多色の帽子を被った女の頭部』は、パッと見は『泣く女』かと思いました。どちらもドラ・マールがモデルですから似ていて当然かもしれませんが。こちらはたっぷり絵の具を乗せた油彩で、見る側に充足した安心感を与えてくれますね。1939年の作品なので、右下の数字18.2.39は2月18日に描き上げたという事なのでしょう。描いた!というピカソの満足感がうかがえる気がしました。

という事で、いや〜もう本当に素晴らしいコレクションでした。当然ながらピックアップしたのはほんの一部。しかも、ピカソ以外にも素晴らしい作品が目白押しだったので、それらはまたの機会に。来年1月まで開催されているので、もう一度行きたいと思っています。

ピカソで大満足し、さすが国立西洋美術館!と思った勢いで、久しぶりに常設展にも入りました。本当に安定の素晴らしさ。が、こちらもまたの機会に。1月22日まで東京で、その後は大阪展もあります。ぜひ時間にゆとりのある時に行って下さい。天才芸術家の天才ぶりが堪能出来ますよ。
https://picasso-and-his-time.jp/outline.html

 

そんな週の一本は、『ソングバード』です。

2020年春、日本もついにコロナ禍本格突入の時に、不謹慎ながらも映画ファンとしては「必ずこの状況もそのうち映画になるだろう」と思っていましたw

コロナ禍ロックダウン中のLAで撮影された…という事で、もちろんそれは大変だったと思います。そんな意味では早い!と喝采すべきかもしれませんが、う〜ん、結構早過ぎた気がしました。『戦慄のパンデミック・スリラー』と言われても…もちろん映画なので極端な部分はあるけれど、結構実際にあった事で身近な出来事なので、それほど面白いとは思えませんでした。SF感が無さ過ぎるし、バカバカし過ぎる!

これはもっと10年くらいのち、実際のコロナ禍は幼な過ぎて覚えていない若者が台頭してきた頃なら、怖さが伝わったかもしれないです。

ただ全く前知識がなかったので、デミ・ムーアの登場には驚きました!あれ?これデミ?2003年の『チャーリーズ・エンジェル』の時に、顔のみならず全身整形したと話題でしたがw さすが今年還暦とは思えないスタイルの良さ。その後のメンテもしているんですねw が、顔の輪郭や頰も脂肪吸引したのでしょうか。それともフィラーが分散した?なんか頰がボコボコしていて可哀想な雰囲気でした。が、それがまた役どころに合っていたので、今後は年老いた(実年齢通りの)役を演じる女優さんに移行していく覚悟が出来たのかもしれないですね。

そうして考えると、歳をとって雲隠れする、いえw 仕事をしなくなる(呼ばれなくなるのかもしれませんがw)女優さんに比べ、女優魂があるとは思いますが、だったらフランスのカトリーヌ・ドヌーヴのように、人工的に作らず自然に年齢を重ねた女優さんの方が結局は正解だった気がしますねw どれほど手を加えても、結局は誰も時間には逆らえないのですから。

 

という事で、経年劣化はとても他人事ではありませんが(苦笑)、私はカトリーヌ・ドヌーヴのように生きてVIPをご案内していきますよw 随分前からコロナ禍にあって希望の星だったNight Rangerの来日がいよいよ迫ってきました。エアロスミスの50周年、LUNA SEAの30周年の間でナイト・レンジャー40周年です!彼らのライヴは本当に楽しいですよね!とても楽しみ。VIPの皆様、もうすぐお会いしましょう!!