Amy's This Week

2020.11

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2020.11.10

11/2-8, 2020 アメリカ大統領選挙と、『キーパー ある兵士の奇跡』

まだトランプ大統領の敗北宣言はありませんが、日曜日の朝、バイデン氏が米国大統領選史上最高の得票数を得て当選確実となり勝利宣言がありました。アメリカ第46代大統領はバイデン氏ということになるようです。

前回の選挙で私は、周囲に「もしかしてトランプが勝つかも」と言っていました。これはホントで、もう賭けておけば良かったと思ったくらいww 当時、なぜそう思っていたかといえば、私の周囲のアメリカ人たちがこぞってヒラリーを嫌っていたからなんです。

誰も「トランプが良い」とは思っていなかったけれど、対抗馬の「ヒラリーが嫌い」という人がとても多かったので、そうした人々が仕方なくトランプさんに投票していたのでしょう。ヘイトの力って凄いな、と思いました。

ヘイトの力の恐ろしさを思ったのは、この時が初めてではありません。2000年の大統領選挙。私の周囲のアメリカ人たちは口を揃えて「No Gore!」とにかくゴアが大統領になるのはNo!! ゴアの妻がファーストレディーになるのは絶対No!! だったのです。

そう言われると私も同意見になりました。なにしろ、政治に疎い私はアル・ゴアの名前は知らなくてもティッパー・ゴアの名前は知っていたからです。ティッパー・ゴア!日本人でも洋楽ファンなら当時誰もが疎ましく思っていましたよね。「ロックが子供達をダメにする」ってもう、バカじゃないの?そう、本当にバカみたいにヒステリックに大騒ぎして音楽を否定した団体PMRCを先導していたのがゴア氏の妻、ティッパー・ゴアでした。

ジューダス・プリースト、モトリー、プリンス、W.A.S.P.、マドンナ、デフ・レパード、ツイステッド・シスターズ、サバス…その他多くのミュージシャンが槍玉にあげられ、CDには軒並みアドヴァイザリーのステッカーが貼られました。日本では問題なかったけれど、アメリカではアドヴァイザリーのステッカーが貼られたCDは取り扱わない販売店も出て、音楽界ではティッパー・ゴア自身が悪魔のような存在となったのでした。

そんな大騒ぎののちの大統領選挙では、多くの人々がブッシュの息子vs. ティッパー・ゴアの夫…と捉えていたのは否めないでしょう。そして、音楽業界の人々や多くの音楽ファンが皆、ティッパー・ゴアをファーストレディーにするのだけはごめん!と思っていたのでした。

ゴアさんもそうした空気は当然分かっていたのでしょう。選挙活動にはもっぱら妻ではなく娘を連れていました。が、結果は僅差でブッシュ勝利。今さらなことですが、2010年にゴア氏はティッパー・ゴアと離婚しました。だったらもっとずっと早くに離婚していたら結果は違っていたかもしれませんよね。そしたらイラク戦争も無かったかも?しれないし。 私は2006年の映画『不都合な真実』でゴアさんのファンになりました。ゴアさんは若い時から地球温暖化に関心を抱き警鐘を鳴らしていたんですね。もし2000年の選挙でゴアさんが大統領になっていればこの映画は無かったかもしれませんが、政治の力でアメリカをエコ大国に導いていたかもしれません。なのに…。ティッパー・ゴアに対するヘイトの力が、その後の世界を変えたのかもしれない、と言うのは言い過ぎでしょうか。

そして今回のトランプ大統領vs. バイデン氏の対決では…洋楽ファンとして、4年前にはなかったほどブッシュ大統領ヘイトの人々が増えたのを実感していました。4年前、ヒラリーが嫌いだからと選んだトランプ大統領が、あそこまで音楽に対するリスペクトが無いとは。多くのミュージシャンがトランプ大統領にクレームしても、大統領はガン無視。ん〜、何に対してもリスペクトは持たない人なのでしょうか?(^^;

反トランプとニュースになっただけでもメタリカ、ブルース・スプリングスティーン、ジョー・ウォルシュ、ニール・ヤング、エアロスミス、サンタナ、ガンズ、ドン・ヘンリー、リアーナ、リンキン・パーク…などなど一流どころがズラリ。英国のブライアン・メイ、エルトン・ジョン、デフ・レパード、ストーンズ、アデル、フィル・コリンズなども反トランプを表明していました。彼ら自身に選挙権は無くても、アメリカへの影響力は大きいですよね。メタリカのラーズは「もしまたトランプが再選するなら、自分は故郷のデンマークに帰る」とも言っていたので、これでアメリカに残ってくれそうですw

ブライアン・メイのように「一切の政治活動に関わりたくない」というポリシーは、多くのミュージシャンが同意するところでしょう。が、エアロスミスは2016年のオバマ大統領時代、フロリダの空港で大統領と偶然出逢った時、自分たちのフライトを遅らせてまでオバマ大統領や大統領専用機と何枚もの記念写真を撮りました。嬉しそうに大統領専用機のステップに座ってポーズを取った写真は微笑ましいほどでしたよね。つまり、政治嫌いではなくても、トランプは嫌い、というアーティストもいるわけです。

とまあ、多くのミュージシャンがトランプ大統領をヘイトしたからバイデン氏が勝った…というのは端的過ぎると分かっています。が、少なからず今回も「ヘイト」の力が大きく関わった、とは思います。ただ、少し前回と違うのは、前回はヒラリーとトランプどちらも好きではないけれど、敢えて選ぶならヒラリーの方がもっと嫌い…という人が多かった中、今回はトランプ大統領は嫌い、バイデン氏は…よく分からない、という人が多いように思えました。あくまでも、私の知り合いのアメリカ人の間でのことですが。

そんな、特に好きか嫌いか分からない…と思っていたバイデン氏が、大統領選当選確実と報じられました。トランプ大統領の敗北宣言は未だありませんが、バイデン氏の勝利宣言では「怒りと暴言を忘れて団結しよう」と、トランプ大統領支持者へ訴えていて…もっともだと思いつつ、「怒りと暴言」という単語が出たことに驚き、よほど選挙中に浴びせられたのだろうと同情しました。 またバイデン氏のプロフィール紹介が増えてきて、彼のファミリーヒストリーには胸を打たれました。次期ファースト・レディとなる人は二番目の妻とは知っていましたが、最初の妻と幼児だった娘は交通事故で亡くしていたんですね(涙)。さらに、その時重傷を負いながらも生き残った二人の息子のうち一人は、2015年に脳腫瘍で亡くしたとか。どれほど無念だったでしょう。その時のお葬式の写真がありました。なんという悲痛な表情でしょうか。バイデン氏のトレードマークのサングラスは、この時涙を隠すためのものでしたね…。

100%完璧な人間はあり得ないし、バイデン氏も政治家ですからビジネスマンのトランプ大統領とは違い、政治家としての裏表というか、やせ我慢やパフォーマンスなどもあるでしょう。それでも、彼はソフトな外見では見えない芯の強さがあると確信出来ます。それは、大きな大きな喪失感を味わい、一度は真の絶望を味わうもそこから這い上がった者は、必ず亡くなった愛する人たちの為にも頑張ろうと思い、ずっと強くなるのです。それが唯一の亡くなった人たちへ今の自分の出来ることであり、また亡くなった人々が見守ってくれていると信じるからでもあります。大統領選が終わり、日曜日の朝教会へ行った後にバイデン氏はお墓まいりに行ったそうです。きっと、亡くなった奥様、幼い娘、病気に苦しんだ息子たちに見守ってくれた感謝と、これから大統領として頑張るので見ていて欲しいと伝えたのではないでしょうか。

音楽界では、早速レディ・ガガがバイデン次期大統領と初の女性副大統領となるカマラ・ハリス氏への喜びの声をインスタにアップしていましたね。レデイ・ガガは選挙運動中からずっとバイデン/ハリスを応援しサポートしていたので、本当に嬉しかったのでしょう。そう、カマラ・ハリス氏は初の女性副大統領!これにはハリウッド女優やスーパーモデルたちも喜びの声を上げています。

ロック界で私が嬉しかったのは、ヘイルストームのリジー・ヘイルの言葉でした。「ツイステッド・シスターズの曲からの『We’re Not Gonna Take It Anymore』という言葉は不滅だ!」という冒頭で始まります。全文は載せられないのでコチラをご覧下さい。
https://www.instagram.com/p/CHTIJkZBzeD/?utm_source=ig_embed
後半の一部を訳すと…
「ロック・ショウではあなたの性別も、肌の色も、性的指向も、仕事も、住む場所も、着る物も、ハンディキャップも、成功も失敗も…何もかも関係ない。ライヴ会場ではみんな一緒。一つになるの!私たちは共にある。口紅とレザーみたいにね。みんな、愛しているわ!Dio Bless America!」

もう本当に感動的。中東やアフリカからの入国制限をしたり移民に厳しかったトランプ大統領に反して、バイデン氏は入国制限を廃止すると言っていますし、現在健康保険は一部のゆとりある人々のものであるのに対し、バイデン氏は希望者全員が入れるオバマケア(国民健康保険みたいなもの)を復活拡充するとも言っています。みんな一緒になるべきなのです。また真っ赤な口紅をつけてレザーに身を包むリジーには、必ず口紅とレザーはセットなのでしょう。真っ赤な口紅は、ロック界での少数派である女性のアピールでもあり、男性社会との共存の象徴でもあります。バイデン氏同様、ハリス氏のことも応援していたんですね。 そして最後の1行が泣かせます!普通ならGod Bless America!と言うところをDio Bless America!って、これは絶対、ロック・バンド率いるリジーはロニー・ジェイムズ・ディオを尊敬しているからですね!ディオはイタリア語で『神』= God。ああ、リジー大好きになってしまいましたw

カマラ・ハリス次期副大統領は、少し意地悪な言い方をしてしまえば、いかにも民主党が推薦しそうな人と思ってしまいますが、同じ民主党推薦の女性候補でもヒラリーとは大違いw 両親がジャマイカ出身とインド出身という有色人種の移民ということは、すべてのアメリカ国民に大きな意味があるし、日本人にとってもアジアの血の流れた女性副大統領だなんて、嬉しいことじゃないですか。「私は初めての女性副大統領かもしれないが、決して最後ではない」というスピーチも素晴らしかったです。

縁起でもないので誰も触れないことですが、副大統領というのは、大統領に万が一のことがあれば即座に新大統領に就任する人でもあります。バイデン氏は高齢なので、万が一、万が一、万が一…のことがあれば、女性大統領誕生!!いやいや、失礼しました(^^; バイデン氏には元気に4年間勤め上げて頂き、楽しい引退生活をするために次回の大統領選には出馬せずに勇退して頂き、この4年間の成果を元に、現職副大統領が大統領選に打って出て初の女性大統領誕生…というのが理想ですねw ちょっと先のことまで考え過ぎてしまいましたかww

話は戻りますが、私はゴアさんの『不都合な真実』に痛く感銘を受けた者の一人として、トランプ大統領が米国をパリ協定から離脱させたことに一番の失望を覚えていました。バイデン氏は大統領に就任したら即座にパリ協定に復帰すると言っているので、地球環境のことを思えば大国アメリカが今後ずっと民主党で行ってくれることを願っています。いえ、世論が押せばそのうち共和党も環境を重視するようになるかもしれませんけれどね。 日本の過去前例のない酷暑や豪雨、アメリカの巨大ハリケーンや巨大竜巻、西海岸の山火事など。オーストラリア大陸では山火事でコアラなど12億匹の動物が犠牲になったなど…(泣)。12億ですよ!!すべて分かっていたのに地球温暖化を放置した結果です。火傷をしたコアラの報道は本当にもう見たくありませんよ(涙)。バイデンさん、どうぞよろしくお願いします。

動物の話題が出たところで最後に…バイデン大統領になると、ホワイトハウスにファーストドッグが戻ってくるというのも話題になっています。バイデンさんは最初、シェパードをブリーダーから購入したところ、パピーミル(商売のために子供を産ませる業者)から買ったと批判を浴びたために、その後2匹目のシェパードを保護施設から引き取ったそうです(^^; そう、命の売買は良くないですからねw そして他人(ひと)の意見に耳を傾けるのは、政治家の基本ですからねw

ということで、今年のアメリカ大統領選挙の結果は出たと言える状況になっているのに、トランプ大統領からはまだまだ敗北宣言が出ませんね。あの(と言ってしまうところ、ごめんなさいw)ヒラリーでさえ、選挙の結果が出た時には紫色のスーツで敗北宣言をしました。紫色は、赤と青を混ぜた色…というノーサイドの象徴です。こうした紳士協定に、我々はグッときてしまうんですよね。

『戦争は血を流す政治であり、政治は血を流さない戦争である』と言ったのは毛沢東でした。トランプ大統領はもともとビジネスマンなのですから、本職に戻るだけでしょう。早く終戦として、アメリカが一丸となって早くコロナ撲滅や地球温暖化阻止に集中してくれることを、切に願っています。

 

そんな週の一本は、『キーパー ある兵士の奇跡』です。 いや〜、久しぶりに打ち震えるように咽び泣いてしまいましたよ!!T T 観る前には想像もつかなかったほどの感動、感動、大感動!!!ホントに良い映画でしたぁ〜(号泣)

実在のバート・トラウトマンという、第二次世界大戦時の元ドイツ兵が、戦後英国プロサッカークラブ、マンチェスター・シティ(マンC)の人気選手になったという大感動の実話です。つい先週、『事実は小説より奇なり』と書いたばかりでしたが、感動の度合いではやはりスポーツ物には敵いませんね!思い出すだけで、涙が溢れてきてしまいます。

第二次世界大戦時にナチスの兵士ではあっても、当時のドイツの若者に選択の余地はありませんでした。この主人公も命令だったから戦っていただけなのに、仲間を殺されたのはお互い様なのに、当然終戦後のイギリスでは虐められ、嫌われます。が、そこをグッと我慢して、好きなサッカーに打ち込み、やがてやっと認めてもらえるようになっても、さらなる不幸が…。実話とはいえ、現代では広く知られてはいない人だと思うので、あまりにドラマチックなストーリー、ネタバレはしないでおきますw あまりサッカーに興味が無い人でも(私w)、戦争映画が苦手な人でも、誰でも必ず感動出来ると思います。また主人公のバートを演じるデイヴィッド・クロスが良いですから!哀しみ、悔しさをグッと飲み込み、ひたすら耐えて、運命に身を任せながらも、流された先で全力を尽くす…。ああ、やっぱり涙が出そうになる〜w 今年一番の作品と言ってしまいます!

 

さて、この週は久しぶりに会った洋楽ファンな友人と、『メタルめし』というお店に行ってきましたw もし夜、飲みに行ったら超盛り上がっただろうな〜ww が、ランチタイムに行ったので、ガンガンにメタルが流れる中でのお食事には、少し嬉し恥ずかしな気分でしたw メインに巨大ソーセージの乗った『パンテラの鎌首ナポリタン』を頂き、トリビュートの気持ちで前菜にはこの『パン・ヘイレン』をオーダーしましたwww 明太トースト、おいしかったですww