Amy's This Week

2021.03

01
2021.03.01

2/22-28, 2021 コンスタブル展と、『愛と闇の物語』

私は長年、曜日に関係の無い生活です。が、コロナ禍となり、ものすごく曜日を意識するようになりました。外出するのであれば、なるべくどこも混まない曜日を選びたいから。となると、だいたい週の半ばが私にとって外出のチャンスになるところ、この週の火曜日は祝日だったんですね!アブナイ、アブナイww

火曜日と並んで世間が空いていると言われるのが水曜日です。が、気をつけないと、そのために水曜日をサービスデイにしていることがあったりします。数年前のとある水曜日、トビカン(東京都美術館)へ行ったら長蛇の列が!何かと思ったら、その日はシニア無料デイだとかで、渋々出直したことがありましたw ということで、今はとにかく混みそうなイベントは特に下調べが重要です(^^;

そんな下調べの結果、行ってきたのがコンスタブル展でした。

お久しぶりの三菱一号館美術館。丸の内の一角にある素敵な洋館です。いつもここは入場料が若干お高めなんですけどね(^^; 建物の維持費を考えれば致し方ないですw 館内も狭いので、とにかく空いていそうな時しか行きたくありません。開幕したらなるべく早めに行こうと思っていました。

テート・ギャラリーか〜。心は遠くロンドンに飛びます。ラファエロ前派やターナーがたくさんあってはしゃいだ記憶が。そう考えるとコンスタブルは風景画ばかりで地味な印象ですが、だからこそ、こうしてコンスタブルにスポットを当てた日本での美術展は価値があります!それにとにかく、コロナ禍にあって、ありがたい貴重な西洋絵画展!ありがとうございます!

館内は最後の1枚を除いて撮影禁止なので(ケチ!と思うけれど、ここの美術館はいつもそんな感じですね…)、気に入った作品をネットで見つけるのに苦労しましたw ハガキにもなっていなかったので。1816年に結婚して、お金を稼ぐために肖像画を多く受注した頃の作品、『ジェイムズ・アンドリュー夫人』(1818)です。風景画では描くことのない、ヘッドドレスや服の生地の描き方が素晴らしく、しばし見とれました。私はこうした布の質感を観るのが好きなんだな〜と思ったし、これほど描けてもコンスタブルは風景画の方が好きなんだな〜と思いましたwww

これは『雲の習作』(1822)です。つまりコンスタブル本人がタイトルを付けたのであれば、あくまでも雲の描き方の練習ということでしょうが、目の前にした時、雲がこちらへ迫ってくるような錯覚を覚えました。素晴らしい立体感、躍動感。これは立派に額装したくなる画商の(もしくは美術館の?)気持ちが分かりましたw

興味深かったのは、1832年に、ロイヤル・アカデミー展で並べて展示されたターナーの作品とコンスタブルの作品が、今回ロンドン以外で初めて再び同時に展示されたそうです。当時は、このコンスタブルの色彩豊かでわりと派手な作品と並べられると知ったターナーが、直前になって海上に浮かぶ真っ赤なブイを書き加えて作品にインパクトを付けたのだとか。これは面白い!ターナーの『ヘリヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ号』(1832)

ターナーを焦らせた(?)コンスタブルの『ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日)』(1832)

確かにコンスタブルの作品としては、非常に登場人物が多く、色彩が賑やかで派手な作品です。そうか、この二人はライバル意識があったんですね。もしかしたら英国ロイヤル・アカデミーは、わざとこの二人をお互いに意識させて、より切磋琢磨させようと目論んでいたのかもしれませんw

私が面白いなと思ったのは、この頃のターナーはまだいわゆるターナーっぽくないというか、のちに「モップで描いている」などと批判された描き方ではなかったことです。そのモップ描法(と呼んで良いのか?w)をファンは皆大好きなわけですが、今回のコンスタブル展に展示された数展のターナー作品はいずれもこの、コンスタブルと並べられたロイヤル・アカデミー展以前のもので、どれもがモップ描法ではなく…もしかしたらターナーはライバルと比較されるのが嫌で、自分らしさを追求した結果が、のちのいわゆるターナーらしい描法になったのかも?だとしたら、コンスタブルはターナーを育てたと言えるかもしれないですよねw

当時の新聞でターナーの描き方を風刺した漫画w これ、大好きですw

では、このコンスタブル展にはなかった、有名な、いわゆるターナーっぽいターナー作品をいくつか。まずは『雨、蒸気、スピード - グレート・ウェスタン鉄道』(1844)

『解体されるために最後の停泊地に曳かれてゆく戦艦テメレール号』(1839)

『奴隷船』(1840)

…と、期せずしてコンスタブル展でターナーの変化に気づいたわけですが、当のコンスタブルも初期からずいぶん変わっていったように見えました。ターナーと比較された『ウォータールー橋の開通式』はすでに変化した作品で(あくまでも私の私見です)、初期の頃はそれこそ私が退屈(失礼!)…と思ってしまうような素朴な英国のカントリー風景。が、1828年末に妻が亡くなった頃あたりから、画風が派手というか、色彩やオブジェクトが豊かになった気がしました。妻の死の影響か?と一瞬思ったのですが、どうやらそうではなく、妻の死後わずか数ヶ月で、ロイヤル・アカデミーの正式会員に選出されたのでした。

これは公式な評価を確立したこととなり、以降は批評家の反応に左右されず、主題や技法を自由に選べるようになったということ。風景画も、実際の風景の中に自由にモチーフを配置し直すなどして、理想を求めたそうです。これは、妻の死を乗り越えるのに一番のパワーとなったでしょうね。好きなことを好きに出来る!それがそのままダイナミックな作風になったと思いました。これは『草地から望むソールズベリー大聖堂のスケッチ』(1829) です。筆のタッチが力強く立体感があり、色彩も赤や白のインパクトが効いていますね。私がイメージしていたコンスタブルに対して「ごめんなさい!」と言いたくなりましたww

こちらはかなり小さな作品でしたが、月明かりの下で全体を同系色にした大胆さが美しく、足が止まりました。『月光に照らされるネットリー・アビー』(1833)

最後に、今回唯一写真撮影がOKだった『虹が立つハムステッド・ヒース』(1836)です。この時期の作品ですから、虹はコンスタブルの創造だったかもしれませんが、ではなぜここに?と考えるのも面白いです。大胆な風景の切り取り方に、ダイナミックな雲の色彩。今回のコンスタブル展で、すっかり私のコンスタブルに対するイメージは覆されました。それほど興味がある方ではないけれど、せっかくだから…くらいで行ったのに(^^; コンスタブル展、本当に良かったです!

ところで、なぜこの1点だけ撮影OKとなったのか。逆に、なぜ他の作品は撮影OKではないのか…?が気になりました。だって本家テートでは基本撮影OKですからね。決して貸主テートの意向ではないはずです。三菱一号館は狭い会場なので、渋滞防止のために、最後の1枚以外は撮影禁止…としているのかなぁ?だとしたら、入場料は高いし、撮影OKは1点だけだし…と、なかなか残念な美術館。でもだからこそ?コンテンツの良さで勝負しているのかも。本当にここ、良いのやるんですよねw だから仕方ないか(^^;

ということで、すっかりコンスタブルのイメージが変わったコンスタブル展はまだ始まったばかり。5月までやっていて、緊急事態が終わったり、GWなんてなったらとても混むかもしれないので、行くなら早めがオススメです!
https://mimt.jp/constable/

 

そんな週の一本は、ナタリー・ポートマンの『愛と闇の物語』です。

なぜか、この週だけの短い上映期間でした。なんで?ナタリー・ポートマンなのに?と疑問だらけの中、取り敢えず慌てて鑑賞。上映が始まってすぐに、あ、だから?と思ったのは、全編ヘブライ語でした。ん?でもメル・ギブソンの『アポカリプト』なんて全編マヤ語だし、話題になった『異端の鳥』なんてスラビック・エスペラント語なんていう実際には存在しない人工言語でした。それでもどちらも長期に渡って上映されていましたよね…。

なので理由は分からないままですが、いかにナタリーといえども暗〜い内容だったので、始めからあまり集客が期待出来ないと、短期決戦にしたのでしょうか?(^^;

ナタリー・ポートマンがイスラエル生まれのユダヤ人であるのは有名。原作を読んでぜひ映画化したいと、彼女自身が監督でもあります。プロデューサーは英語にするよう言ったそうですが、ナタリーが頑としてヘブライ語にこだわったとか。そのあたりはとてもナタリーらしいです。

イスラエルの建国の歴史は私にとってあまりに複雑。だから真に理解することは出来ないのだけど、東欧から移住し、建国の波に飲まれ、家族からも世間からも孤立した女性が徐々に精神を病んでいく様は、まさに『ブラック・スワン』ナタリーの真骨頂。どよ〜んと暗い作品かもしれないけれど、私は嫌いじゃあありませんでした。

イスラエルに旅行したら、今後のことを考えてパスポートに直接イスラエル入国ハンコは押さないでもらっておく…というのは、旅行者の間では知られた話ですよね。でないと、他のアラビア各国に入国出来ないそうです。もうそこで、闇が深いな…って思いますが、そんな闇を覗いてみたい気もします。いつか、イスラエルに観光に行けるかな?

 

『2月は逃げる』…という通り、あっという間に終わった2月でした。コロナ・ワクチン第3弾も日本に到着。米LiveNationのCEOが「アメリカでのライヴ・コンサートの再開はこの夏頃」…と言いましたね。

確実に、トンネルの出口に向かっていると感じる最近。東京はリバウンドしないように、もう一踏ん張りしましょうね!