Amy's This Week

2020.07

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2020.07.28

7/20-26, 2020 太田記念美術館コレクション展と、『レイニー・デイ・イン・ニューヨーク』

なぜ見つけたか、今では分からなくなりましたが、この週ふとネットで見つけたのが、この太田記念美術館コレクション展。そもそも、そんな美術館があるのも初めて知りました(^^; 浮世絵に興味を持ったのがまだここ数年のことなので、知らなかった自分を責めたりはしませんがw 知ったからには…え?今週いっぱい?ひゃあ〜!これは急いでGo!! ww

ポスターにもなったこの作品は、歌川芳虎の『鍾馗』。鍾馗(しょうき)とは、五月の節句に飾られるあの鍾馗様です。魔除けの神様なんですね。古代では病も悪鬼の仕業と思われていたので、魔除け=病魔除けで、五月の節句ではきっと、子供が病気にならず健康に育つようにという願いが込められたのでしょう。このコレクション展の最初のパートは、コロナ禍にあって、病魔に打ち勝つために作られた作品が集められました。この鍾馗様は人々に病気をバラまく鬼を懲らしめているところです。お前のせいだったのか!!ww

浮世絵が盛んに制作された江戸時代は、現代に比べると破格に生きるのが大変な時代だったはずです。治療法どころか原因さえ分からないコレラや疱瘡などの流行病の数々、今日食べる物にさえ困る大飢饉、その上常に地震があるのは日本のさだめだし、さらに富士山の噴火もありました。そんなキビしい日々を、江戸の人々が決してユーモアを忘れずに逞しく生き抜いた術が、ここにあると思えました。

こちらは歌川芳虎の『家内安全ヲ守十二支之図』です。家内安全、つまり家族に病人が出ませんようにと、十二支を全て詰め込んだ縁起の良い動物です。子の顔、丑の角、虎の背中の模様、卯の耳、辰の火炎、巳 の尻尾、午のたてがみ、未のあごひげ、申の後ろ脚、酉のとさか、 戌の前足、亥の背中の毛並み…とまあ、てんこ盛り!他にも組み合わせ方はあったでしょうに、顔がネズミって妙に可愛いですw この絵が描かれた年(安政5年/1858年)はコレラが大流行していたそうなので、コレラの厄除けに描かれたらしいとか。江戸時代の人の必死さと同時に、人々を元気づけようとする気概が感じられますよね。

当時コレラと並んで恐ろしかったのが疱瘡。そういえば、映画『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』の中で、エリザベス一世が疱瘡になっていました。それは事実で1562年のことらしいので、16世紀に英国で流行った疱瘡(=天然痘)が17世紀以降の江戸時代になって日本に広まってきたということでしょうか。

その当時の疱瘡パンデミックから身を守るお守りとして描かれたのが、この歌川国芳の『木兎(みみずく)に春駒』です。赤い色には魔除けの力があるとされていたので赤一色。大きな目をしたミミズクは、疱瘡による失明の危機から守ってもらうため。春駒というのは縁起の良い子供の玩具だそうで、子供を守るため、また子供に見てもらうために共に描かれたのでしょうか。いずれも、庶民の守り神はとても可愛らしく、親近感のある描かれ方をしていますね。

美術館の二階へ上がると、次は災いのある中でもユーモアがあり、心がホッとする作品の特集です。あまりに細かく、しばらく絵の前に佇み隅々まで凝視したのが、歌川芳藤の『しん板猫のたわむれ踊のをさらゐ』。松魚亭(かつお亭っていかにも猫のパラダイス的な名前w)という名の料亭で、下の階ではお行儀よくお食事する猫たち(もちろん魚料理)が、上の階では踊りの発表会が開かれ、今でいうライヴを繰り広げる猫たちが描かれています。よく見れば「うまいうまい」とか「なりこまや」なんていう観客の褒め言葉や大向こうのセリフも書かれているし、左上には『坂東三毛治』という名前があって、それは踊っている人(猫)の名前かしら?そういえば、その名の通り、登場している猫は全て三毛猫!といことは、松魚亭は女の館?ww いくらでも眺めていられます。とか言って、実際はとても小さい作品なので、こうしてネット上の画像を拡大して見る方が楽しいかもしれないけれどww

東海道五十三次の岡崎(または岡部)は、化け猫が出てくるモチーフが有名だそう。行灯の油を舐める姿を見られると、化け猫が姿を表すというもので、この歌川国芳の『五十三駅岡崎』でも、猫が油を舐める姿が映された行灯があり、その奥から大きな化け猫が顔を覗かせています。 可愛いのは、手前にいる二匹の踊る猫。頭に手ぬぐいを乗せて、陽気な人間の酔っ払いのよう。が、二本に裂けた尻尾が化け猫=猫又である証拠。でもやっぱり可愛い!ちなみに、この時代20年以上生きた猫は化け猫=猫又だと言われたそうです。それほど当時は20年も生きる猫がいなかったのでしょうね。が、現代は食べ物も環境も良いので、20年以上生きる猫は珍しくありません。うちの子も、猫又になってほしいです!w

なんだか国芳だらけになってしまいますが、気に入ったのだから仕方ありませんw これは国芳の『ほふづきづくし 八そふ飛び』。ほおずきの擬人化です。「八そふ飛び」とは、源義経が壇ノ浦の戦いで、船から船へと八艘の船を軽々と飛んだという逸話からです。このほおずき、見事に義経に見えるではありませんか!ww

壇ノ浦の戦いの絵はこんな感じ。これをほおずきに見立てるって、国芳のイマジネーションって半端ないですね!

とまあ、他にも面白い作品が満載だった太田記念美術館コレクション展。実業家の5代目太田清蔵氏が、浮世絵の海外流出を憂い、自分で14000点集めて美術館を作ってしまったという、日本版バーンズ・コレクションですね。素晴らしい。確かに浮世絵は海外の美術館に多数収蔵されていて、私が初めて国芳を知ったのもボストン美術館でした(^^;

以前にも書きましたが、コロナ禍となって私の頭の中ではたびたびミュージカル『42nd ストリート』からの『There’s A Sunnyside to Every Situation』が響き渡ります。どんな状況下であっても、必ず良い面はある…ということで、コロナで海外からの美術品輸送が途絶えた今だからこそ、浮世絵を楽しむ機会が増えたのかもしれません。

美術品としての浮世絵を楽しむのはもちろん、疫病や天災などで苦しい日々の中でも、出来るだけ楽しく生きていこうとする江戸時代の人々の生きる術、逞しさなども学べる気がします。ああ、日本人って強いんだな、って思えますよね。このコレクション展は終わってしまいましたが、太田記念美術館、今後も要チェックです!

 

そんな週の一本は、ああ、胸がいっぱい❤️な『レイニー・デイ・イン・ニューヨーク』です。 今までウッディ・アレン監督は苦手でした。どの作品も、なんか理屈っぽいセリフが多くて、の割には大したことのない(失礼!)日常なだけで、結局は途中必ず寝てしまうんです(^^; それほど、私には退屈でした。が、分かってはいても今回はティモシー・シャラメだもの!

『君の名で僕を呼んで』ではアーミー・ハマーが良過ぎ。でも『若草物語』で魅力がほとばしり、おおっ!と思ったばかり。なので、内心「寝ないで、自分!」と思いながら観に行くと…寝るどころか、もう最高で最高で、これはそのうち放映されたらハードディスクに録画永久保存間違いなし!いや、アナログにDVDを買ってしまおうか!いやその前にまずはもう1回シアターへ行こうw…ともう大感動でした。

確かにたわいもないラブコメといえばそれまでなのですが、シャラメくんの魅力が全開!300%『若草物語』を超えました。ピアノの弾き語りをするシーンが公開されているので見てみて!!チェット・ベイカーですよ。ズージャ!w 都会の、育ちの良いお金持ちの男の子を演じさせたら、今世界一な俳優サンです。
https://youtu.be/6EEaW8mNXcY

ニューヨーク市の魅力も満載。旅に出られないからこそ、なおさら各地の良いところばかりを思い出してしまう今、胸がキューンとするほど『I❤️New York』ww 小洒落たグリニッジヴィレッジやトライベッカ、お金持ちなアッパーイーストサイドなど、良いところばっかり登場しますww また羨ましいことにメトロポリタン美術館に入っても、いかにも来慣れた地元民らしく世間話をしながらサラッと流し見w 遠くからたまに行く人間には出来ないんだよなぁ〜www チケット代わりの小さなステッカーを付けた姿もさりげなく、オシャレに見えてしまうのは私のコンプレックスからでしょうかww

シャラメの彼女がアリゾナ出身と知ると、「何話すの?サボテンのこと?」と、早口で田舎の子をディスるニューヨークっ子のセレーナ・ゴメスも可愛い。ここはウッディ・アレン苦手と言いつつも、都会派ウッディらしいとウケてしまいましたw ストーリーも良かったし(ラストにキュ〜ン!!!)、シャラメ・ファンなら必見。ニューヨーク好きにも必見です。ああ、良かった〜!

 

最後に、亡くなってから最初の『せかほし(世界は欲しいモノにあふれている)』がこの週放映されました。今まで録画を観たあと全部消していたのをめちゃくちゃ後悔しています!この週は、私が今年行ったマルタだったのも勝手に運命と思い、とにかく残り3本は永久保存です。番組冒頭、マルタの映像に重ねて出た画面には、胸が締め付けられる思いがしました。改めて、三浦春馬サンどうぞ安らかに…合掌。涙