Amy's This Week

2020.07

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2020.07.13

7/6-12, 2020 画家が見たこども展と、『ペイン&グローリー』

今年2月のお互いの旅から戻ったら会おうね!と言っていた静岡市在住の友人と、この週ついに会うことが出来ました。こんな東京に来てくれてありがとう(涙)!2月2週目に私はヴェガス、彼女は3週目にインドと、それぞれ今となれば超ギリな旅でした。無事に楽しんで来れて良かったです。

そんな友人と予約して行って来たのが、三菱一号館美術館の『画家が見たこども展』です。

印象派に続く19世紀ナビ派と、彼らに影響を与えたゴッホとゴーガンが描いたこどもたちを集めたという、とても興味深い美術展。三菱一号館美術館の開館10周年記念だそうです。せっかくの10周年がコロナ禍となって残念でしたが、中止ではなく休止ののちに再開、会期延長としてくれたのは有難いですね。

1時間ごとに区切られた予約枠は、何人を定員としているのでしょうか。明治時代の洋風貸事務所建築を再現したという三菱一号館美術館は、こじんまりとした暖炉のある各部屋と、それらを繋ぐ細い廊下で成り立っています。そんな建物自体もとても魅力的なのですが、コロナ禍とあってはかなり入館人数を制限する必要があったと思います。そのおかげで、実にゆったりと優雅な鑑賞をさせて頂けました。

わりとすぐ、ポスターにもなっているゴッホの『マルセル・ルーランの肖像』がありました。 この、まさにゴッホならではの大量に白を使った色合い。白目まで水色です。猫じゃないんだからww とツッコミたくなりますが、そこは全ての色に白を混ぜたいゴッホのことなので、逆に白をそのまま使いたくなかったのかな?

この子どもは、あの郵便配達夫ジョセフ・ルーランの末娘です。ジョセフは数少ない大切な友人で、ジョセフはもちろん、彼の家族のことは何枚も作品にしていて、ゴッホにとって本当に愛する友人一家だったようです。当時4ヶ月だったというこの子のことも、決してジョセフの子供、娘、などではなく、きちんとマルセル・ルーランとフルネームでタイトルを付けたところに、子供に対する敬意というか、ルーラン家に対するゴッホの真摯な姿勢が感じられる気がします。

そしてこの色合いも大好物!我が家の壁を飾っている1枚に、ワシントン・ナショナル・ギャラリーの『薔薇』があります。それにとても似た色合いで、生後4ヶ月というマルセルの、ぷよぷよな柔らかさがとても良く表現されている気がしました。こちら、ゴッホの『薔薇』です。(これは当美術展にはありません)

さて、その他の作品といえば…ナビ派と言いつつ、私にとってはもうボナール祭り!私、この年代の画家の中ではボナールが大好きなのです。なぜかといえば、かなりの確率で人々の生活の中に犬や猫を描いているからw 象徴として描いているわけではなく、主体として描いているわけでもない。あくまでも自然に、モデルの人物と共存するペットとして描いているのが嬉しいし、観ていて楽しいのです。

お金持ちの家に生まれ、生活のためではなく好きだから、好きなものを描いていた愛妻家のボナール。画風は全く違いますが、私には伊藤若冲がカブります。お金に不自由しないので、絵を描くことを楽しみ、楽しめる題材しか選ばず…その結果作品には画家の愛が溢れているのです。絵ハガキにもなっていた『子どもたちの昼食』by ピエール・ボナール。子供達も、猫も、お行儀良い!

残念ながら絵ハガキは無かったので、一生懸命ネットサーチしたのが今回一番気に入った『猫と子どもたち』。猫がおなかを出して抱っこされてるなんて!本当に仲良しなんですね。ずっと観ていられる気がしました。

面白かったのが、パーテーションとでも呼ぶべき?な『乳母たちの散歩、辻馬車の列』。日本の屏風に憧れたというか、模してみたんでしょうね。屏風作りの技術がないので、縁のある縦長の4枚を繋いだだけですが、蛇腹になるよう蝶番が付いていて、何と言ってもこの間(余白)の取り方が、日本の屏風に習っているようです。野良ではなくちゃんと首輪をした子犬もいて、子供の面倒をみながら犬の散歩もしてくれる乳母への愛(人間愛ねw)が感じられます。この屏風もどきの前でも、しばらく佇んでしまいました。

一番最後のカテゴリー『エピローグ』にあった1枚も良かった〜。個人蔵だったので、鑑賞出来て感謝です。『大装飾画、街路風景』。不思議な構成で見入ってしまいましたが、シンプルにコラージュとして受け止めれば良いのでしょう。のちのシャガールを連想されるというか、ボナールの方が先なのでシャガールに影響を与えた?なんて言ってしまったら、絶対にシャガールは怒りますねw ごめんなさいww それにしても個人蔵とは。羨ましい!

…とまあ、大好きなボナールばかり載せてしまいましたが、他にもヴュイヤール、ドニ、ヴァロットンなど、ナビ派が揃っています。展示中盤、唯一撮影OKなヴァロットン作品と共に、三菱一号館美術館の屋根裏構造が見える部屋がありました。以前から屋根裏は見えるようになっていましたが、今回初めて誰もいない状態だったので、ゆっくり見上げて写真も撮りました。

そういえばゴーガンも数点あり、別名『日本に憧れたフランス芸術家たち』…なんてタイトルにも出来そうな美術展でしたw 他の大きな美術館と比べる入場料が若干高めなところですが、いつも魅力的な企画を出してくれます。美術館入口が面した中庭には、屋外に椅子テーブルがセットされたレストランもあり、全く暑くない日だったので気持ちよくパティオランチを楽しめました。 2月から始まり、コロナ禍で長く中断されていましたが、無事再開となり、9月までと会期延長になりました。コロナ対策もしっかりとしてくれているし、日時指定入場のみで非常に少人数設定なので、静かにゆったりと鑑賞出来ますよ。
https://mimt.jp/kodomo/

 

そんな週の一本は、『ペイン&グローリー』です。 もうホントに男ってズルイ!いや、一部の男かw ジョージ・クルーニーしかり、そしてこのバンちゃんも、50代も後半になり、かなりの白髪になって、もはや史上最高にカッコ良くなっています!先ずはもうそれだけ。これって若い時濃すぎる人の特性なの?ww

子供時代の回想シーンが度々あり、ペネロペ・クルスがなんと母親役で登場。これがまた、あまりにもチャーミングで。その記憶が残っていれば、年老いた母を愛おしむのも分かります。そんな彼自身は孤独なゲイで、それもまた美しく、全身の痛みを耐える佇まいまでもがセクシーでwww って全く、勝手なことばかり言ってごめんなさいww

スペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督の自伝的作品だそうで、監督、バンデラス、ペネロペの最強スペイン・トリオ作品です。人生も終盤に近付き、心身共に苦痛を抱えながら、寡黙に耐え、現状脱却を模索する姿を、今だからこそ声に出さずとも表現するバンデラス。アカデミー賞主演男優賞のノミネートも納得の、とても良い作品でした。

少年時代に読み書きを教え、その代わりに自宅キッチンを改装してくれた職人が水浴びをする回想シーン。その職人の裸体の美しいこと!そしてその時に描いてもらった絵がなんと50年ぶりに手に入り、裏面には職人からのメッセージが。そこで思わず涙ぐむバンデラス、そしてもらい泣きの私w 友人はググれば探せるかもと言うのに、いや絵が手に入っただけで十分、と言うのは、美しい思い出をそのままにしたいのだと強く納得しました。

日差しが強ければ強いほど影は濃い…そんなスペインならではの、美しく切ないアルモドバル監督の自伝物語はどこまでが真実なの?と、最後で現実に戻される仕掛けが、私としてはいりませんでした。が、そこはアルモドバル監督的には仕方なかったのでしょうね。とにかく、こうした静かな情熱を湛えた作品が好きです。もう一回観たい!!

 

連日新規感染者が3ケタの東京。みんな頼むから夜はまっすぐ帰ってね。